慢性心不全患者における高齢がβ- blockerの投与量、有効性及び安全性に及ぼす影響に関する調査

DOI
  • 武田 汐莉
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野
  • 六車 萌恵
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野
  • 前田 真一郎
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学部附属病院薬剤部
  • 廣部 祥子
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学系研究科分子医薬学講座 大阪大学医学部附属病院薬剤部
  • 藤尾 慈
    大阪大学薬学部臨床薬効解析学分野
  • 前田 真貴子
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学系研究科分子医薬学講座 大阪大学医学部未来医療開発部

抄録

<p>【目的】高齢化社会を迎え、心不全患者数は増加の一途である。一方、「日本循環器学会 / 日本心不全学会合同 急性・慢性心不全ガイドライン」(GL) において高齢者の心不全薬物治療に関するエビデンスに基づく記載は少ない。本研究では65歳未満 (若齢群) と65歳以上 (高齢群) の患者を比較し、高齢がβ- blockerの投与量、有効性及び安全性に及ぼす影響を調査した。【方法】大阪大学医学部附属病院 (当院) で、2010年1月~2023年5月にCarvedilol (Carve) 又はBisoprolol (Biso)で治療開始された左室駆出率 (LVEF) 40%以下の慢性心不全患者158例を対象に、治療開始後1年間の診療録を用い、患者背景、投与量 (開始、開始1年後 [最終]) 、心機能 (LVEF、左室拡張末期径、左室収縮末期径、心拍数 [HR])、安全性 (副作用による減量・中止)を調査した。投与量はGL推奨用量に対する割合に換算した。有効性は心機能の変化量で評価した。解析にはR又はSPSSを用い、有意水準は0.05とした。本研究は当院及び大阪大学薬学部の各倫理審査委員会の承認のもと行った。【結果・考察】年齢以外の患者背景で身長、体重、eGFR等で有意差を認めたため傾向スコアマッチングを行い、若齢群 (46例、52±10歳) 、高齢群 (46例、72±6歳) が解析対象となった。開始用量は2群間に有意差はなかったが、 最終用量は高齢群で有意に少なかった(0.35 vs 0.24、U検定、p = 0.024)。有効性に有意差はなく、副作用による減量・中止例の割合にも有意差はなかった(n [%]、減量・中止:若齢群、1 [2.2]・4 [8.7]; 高齢群、2 [4.3]・4 [8.7] 、Fisher's exact test)。各群で各薬剤の最終用量と有効性の相関を調べたところ、若齢群ではBiso群(n, r, p; 18, -0.598, 0.009)で、高齢群では両薬剤群(Biso, 15, -0.678, 0.005; Carve, 31, -0.442, 0.013)でHR変化量に負の相関が認められた。以上より、高齢群は若齢群と比較して投与量が少なくても有効性に差は認められないことが確認された。またBisoはβ1選択性が高くHR低下作用が強いため、穏やかなHRコントロールを要する高齢者にはCarveが有用であるとGLに記載されているが、高齢者では両薬剤でHR低下に対する感受性が高まる可能性が示唆された。【結論】慢性心不全患者において、高齢群は、若齢群と比較して投与量は少なくてもβ- blockerへの反応性が高まる可能性があり、心不全の状態を考慮し、慎重に投与する必要性が示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861692692888832
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-o15-3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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