観察研究のSDVはどこまで必要か―モニタリングを受け入れる医療機関の立場から―

DOI
  • 増井 和美
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター
  • 久保田 有香
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター
  • 齋藤 悦子
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター
  • 住吉 尚子
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター
  • 大上 美穂
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター
  • 鈴木 愛穂
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター
  • 大山 善昭
    群馬大学医学部附属病院先端医療開発センター

抄録

<p>【目的】リアルワールドデータの活用促進が進み、薬事承認申請や製造販売後調査への利用が活発化する一方、品質確保のため観察研究や製造販売後調査において診療録直接閲覧(SDV)を依頼されるケースが増えている。第三者(外部モニター等)によるSDV受入れ体制を整備するとともに、観察研究のSDVにおける研究対象者の個人情報保護の問題点を考察した。</p><p>【方法・結果】2019年3月から2023年7月の期間に群馬大学医学部附属病院臨床研究審査委員会に申請された他機関主導多機関共同観察研究199件のうち、モニタリング・監査に関する事項が研究計画書に記載されている32件を分類した。SDVを予定する研究が25件あり、そのうち16件は製薬企業等が資金提供者または共同研究者・代表者であった。アカデミア主体の観察研究においてもSDVを予定しているものが9件あった。大多数は同意取得を必須としていたが、第三者が診療録を閲覧する可能性について記載のないオプトアウト文書を用いるケースもあった。当院では観察研究についてはCRC支援がないため、臨床研究支援部門において研究対象者の把握が難しい。同意取得済みであることを確認し、対象者の取り違えのないよう個人情報保護に努めつつ省力的に対応できるよう、治験のSDVで使用している診療録閲覧制限機能やノウハウを利用した手順を整備した。</p><p>【考察・結論】人を対象とする生命科学・医学系研究指針では侵襲を伴う介入研究のモニタリング・監査への協力を研究機関の責務としており、医療機関はSDVを受入れる必要がある。SDV実施についての同意は必須と考えられるが、オプトアウトによる診療録閲覧については懸念が残る。「レジストリデータを承認申請等に利用する場合の信頼性担保のための留意点について(薬生薬審発0323第2号/薬生機審発0323第2号)」において、個人情報保護に関する配慮として「第三者(モニタリングを実施するモニター、監査を実施する監査担当者、規制当局等)が情報源に保管されている原資料等の閲覧をする可能性がある場合は、必要に応じて当該説明文書にその旨が記載されていることを確認する」とされている。これと同様の対応をレジストリー研究や製造販売後調査で広く行うとなれば医療機関には大きな負担となり、一律の対応には限界がある。個人情報保護、医療機関の負担を考慮した上でのリアルワールドデータの品質確保手法の確立が望まれる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861692692999424
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-p-e1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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