抗菌薬の薬物動態/薬力学モデルに基づく経時的な治療効果の予測

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抄録

<p>細菌感染症治療における抗菌薬の高用量および長期間の曝露は耐性獲得につながり、効果不良例が増加する可能性があるため、治療効果の期待できる用量を患者個別に設定する必要がある。一方、薬物濃度と関連した副作用発現リスクもあることから、期待する有効性を維持しながら安全な用量で治療を実施するために治療薬物モニタリング(TDM)が行われている。たとえば、抗菌薬の薬物動態と有効性との関連は抗菌薬の作用機序により異なることが知られている。抗菌薬の薬物動態/薬力学パラメータとして血中薬物濃度曲線下面積と最小成長阻止濃度比などの濃度依存的な指標だけでなくTime above MICを指標にした時間依存的な指標も用いられている。安全性については曝露反応解析により、副作用発現を示す閾値が提示されている。しかしながら、いずれの指標もある時点での血中濃度と有効性/安全性レスポンスとの関連性を評価するにとどまり、経時的に変化する病態を反映しない。また、薬物動態だけでなく薬力学的反応及び有効性/安全性のレスポンスにばらつきがあることは、複数の抗菌薬で報告されている。そのため薬物動態パラメータだけでなく、薬力学及び有効性/安全性レスポンスを解析に組み合わせることで、患者で薬効が期待される最適な投与設計が可能となると考える。</p><p>本講演では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症治療に用いられるダプトマイシンの薬物動態/薬力学モデルを詳説する。これはタンパク非結合形濃度の予測モデルに加え炎症性マーカーであるC-reactive proteinの推移を経時的に説明するモデルである。ダプトマイシンの投与前後のCRP推移は、(1)投与後に速やかな低下を示したケースだけでなく、(2)ダプトマイシン投与後一過性のC-reactive protein 上昇後、低下に至ったケース、(3)投与前後で変化せずC-reactive protein が低値で一定に推移するケースの3種類に分類されたことから、複数の経時推移の特徴を説明するモデルが必要であった。薬物動態のみならず薬力学反応及び有効性/安全性レスポンスの経時的な推移をモデルに基づき予測することで、投与早期に治療効果を見極め、他剤に変更できるなど、感染症治療が実施できる利点がある。抗菌薬の薬物動態/薬力学モデルを感染症治療に還元することにより患者の転帰が改善されることが期待される。</p>

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  • CRID
    1390861692693019648
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-s39-2
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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