当院の転倒傾向の分析と転倒予防対策チームでの活動報告

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  • O-124 調査・統計

抄録

<p>【活動目的】 近年、我が国では高齢化が進み、高齢者の転倒数も上昇している。年齢階級別にみると、年齢が高いほど転倒事故の割合が高く、「70歳以上」で10%を超え、「85歳以上」になると、25.3%と4人に1人が転倒している割合となっている。</p><p> 当院では2018年12月より「転倒予防対策チーム」の活動が始まり、私もチームの一員として、転倒発生率、転倒傾向の調査、システムや各種書類の改訂作業、会議・病棟ラウンドの実施等を行ってきた。その中で、転倒した際の要因を調査するため、転倒転落の危険性をスクリーニングする「転倒・転落アセスメントシート」(以下、AS)の項目より、ロジスティック回帰分析より検出された11項目に対してどのような活動を行っているのかを報告する。</p><p>【方法】 対象は2018年11月から2022月10月の当院急性期・回復期・地域包括ケア病棟に入院された患者様でASを使用した7,251名。対象者を転倒者・非転倒者の2群に分け、転倒者・非転倒者群を従属変数、転倒・転落アセスメントシートの各43項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。</p><p>【結果】 ロジスティック回帰分析では43項目中11項目が検出(オッズ比、95%信頼区間)。「70歳以上」(1.94, 1.37-2.74)「転倒・転落したことがある」(1.88, 1.51-2.34)「筋力低下がある」(1.54, 1.18-2.01)「車椅子・杖・歩行器を使用」(1.24, 1.01-1.53)「移乗に介助が必要」(1.34, 1.08-1.66)「不穏・せん妄がある」(1.71, 1.26-2.32)「睡眠安定剤服用中」(1.31, 1.07-1.60)「向精神薬服用中」(1.37, 1.02-1.85)「ポータブルトイレ・尿器を使用」(1.30, 1.04-1.62)「リハビリ開始時期、訓練中」(1.33, 1.06-1.66)「行動が落ち着かない」(1.37, 1.01-1.86)という結果になった。</p><p>【活動内容】 今回ロジスティック回帰分析にて検出された11項目を参考に、転倒・転落予防対策のテンプレートを作成し、各病棟で転倒予防ラウンドを実施している。テンプレートの内容としては、「転倒歴」「歩行・トイレ動作」「バランス評価(SIDE)」「転倒・転落危険度」「認知症の有無」「せん妄・不穏の有無」「内服薬」などのチェックリストである。この内容をもとに、見当識の確認や環境設定フローチャートを用いたベッドサイド・ベッド柵の設定、センサー類の設置、病棟スタッフへの周知を目的とした環境設定ボードの設置などを、病棟看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師でウォーキングカンファレンスを行い転倒予防に努めている。</p><p>【まとめ・展望】 今回、ASよりロジスティック回帰分析の結果から、「70歳以上である」「転倒・転落したことがある」「足腰の弱り、筋力低下がある」「車椅子・杖・歩行器を使用している」「移乗に介助が必要である」「不穏・せん妄がある」「睡眠安定剤服用中」「向精神薬服用中」「ポータブルトイレ・尿器を使用している」「リハビリ開始時期、訓練中である」「行動に落ち着きがない」の11項目が検出された。この11項目の内容をふまえた転倒予防ラウンドの活動で、今後、転倒率の変化、転倒が多い日時、転倒状況・原因を追っていきたい。リハビリ訓練中の患者様の転倒数も多く、リハビリにより徐々に身体機能の向上を認めるため、転倒予防ラウンドを実施するタイミングについても検討していく必要がある。また、患者様自身にも転倒に対しての知識が必要であり、今後、転倒に関する内容をパンフレット等での配布も検討していきたい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本研究のデータ収集、分析にはヘルシンキ宣言に基づいて行い、当院の倫理委員会にて承認されたものである。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827229696
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_124
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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