「企業の健康管理の専門家」としての役割

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  • O-129 教育・管理運営②

抄録

<p>【活動目的】 自身のキャリアデザインを考える上で理学療法士という資格を得ていることは、どのような時代においても社会貢献性の高い手段を持っていると考えられる。私は産業保健の分野において、企業を対象とした自身の事業を通じ、従業員のヘルスリテラシーの向上と障害予防、また企業価値の向上を目的として、働く人の健康を管理する役割を担っている。また今回の報告では実際に企業の健康管理に携わったことで感じた理学療法士の可能性について考える。</p><p>【活動内容】 メディワークの事業内容は、専門職による企業のヘルスケアマネジメントのサポートである。</p><p> サポート内容に関しては企業関係者のヒアリングより、その企業の健康課題を抽出し柔軟に対応する。継続的な会社経営に必要となる従業員の健康管理に専門職としての助言をしている。実際の介入は後述の通りである。</p><p>・健康相談、心理面談</p><p>・ヘルスケア研修:腰痛や肩こり、女性特有の健康課題、睡眠やストレス、運動習慣などヘルスケア全般において企業のヒアリングから必要なものを提供</p><p>・健康経営に関するサポート:計画の提案や取組の評価</p><p>・アンケート調査:企業経営層へフィードバックを目的に従業員の抱えている不調や仕事の生産性等について質問</p><p>※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。</p><p>【活動経過】 専門職が企業のヘルスケアをサポートするといったケースはあまり多くないように感じている。しかし随分と前より経済産業省は働く人の健康課題の解決について対応の必要性を示しており、私は実際に働く人のヘルスケアに関わる中で専門職が介入する必要性を十分に感じている。</p><p> 私が産業保健に関心を持ったのは、病院勤務時代より身近な存在である看護師や介護士の不調をよくみていたことである。特に医療や介護の現場には自身の健康を置き去りにして対人支援に従事している人が多くいることを実感していたからである。その当時はPTの立場より集団に対するアプローチや個別相談などを行ない、それに関する評価は良好であったと記憶すると共に、それらを自分で計画しそのマネジメントについて管理職への提案、さらに産業医との連携といった経験が、現在の自身の事業の糧となっていると感じる。</p><p> 介入企業からは自身の事業の必要性を感じてもらえており、従業員のヘルスリテラシー向上や健康的な職場の雰囲気づくりと企業の社会的な信用の向上に貢献できている。これは継続したサポートを希望していただいていることからの考察であり、企業との信頼関係の中で示されているものである。それゆえにその根拠を明確にすることは今後の課題である。</p><p> 企業介入の実際に関しては、定論のない想像のつかないことから始まることが多い。必要性に関しては継続してはじめて結果が明確になることや、個人的なデータを扱うことによる配慮も多いといった難しい部分もある。そういった点で介入企業が健康経営優良法人認定を取得できていることはひとつの評価すべき結果とも考えられる。</p><p> 人生100年時代という言葉も聞き慣れた言葉となったように、近年日本は少子高齢化の影響もあり「就労」においては人生を通して全うすることというイメージも定着してきている。産業保健の分野では働く環境や業種、業態によって具体的なアプローチは異なる。だからこそ、対人支援の専門家であり身体機能の専門家である理学療法士は働く人の健康課題に対し貢献できる職種だと感じている。それと同時に今後必要な能力として医療全般の知識のみならず社会の健康課題に目を向けること、就労を含めた人間の抱える悩み全般に対する理解を深める姿勢がとても重要だと思っている。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827246976
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_129
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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