脛骨高原骨折術後の創部感染によるインプラント除去後にリンパ浮腫を生じた症例 ~複合的介入が運動機能と活動量に及ぼす影響について~

DOI
  • 鶴 大輔
    たたらリハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
  • 香月 祐哉
    たたらリハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
  • 小川 朋子
    たたらリハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
  • 三原 絵美
    たたらリハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
  • 河野 権祐
    たたらリハビリテーション病院 リハビリテーション技術部

書誌事項

タイトル別名
  • O-145 骨関節・脊髄⑤

抄録

<p>【目的】 下肢外傷後にみられる二次性リンパ浮腫による病態や機序はよく知られている一方で、理学療法士による骨折術後にリンパ浮腫を生じた患者に対する運動機能に対する症例報告は少ない。そのため、リンパ浮腫患者に対する、複合的介入(スキンケア、用手的リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法)が運動機能と活動量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。</p><p>【経過】 バイク走行中による事故の為、近医へ入院し左脛骨高原骨折と診断された。手術目的に転院したが、左膝から大腿遠位にかけ腫脹が強く水疱形成著明であったため、受傷から2週間後に骨接合術施行された。受傷時認めた巨大血腫および水疱形成部は黒色壊死化したため、術後6日目に局麻下デブリドマン施行。しかし、創部感染(左膝関節液からMRSA検出)したため、術後15日目にインプラント除去・鏡視下膝関節洗浄・デブリドマン施行。その後、創部潰瘍は治癒し骨癒合が得られたが、両下肢リンパ浮腫が残存し加療目的で当院受診し入院となった。</p><p>【倫理上の配慮】 本人に本報告の趣旨と内容を十分に口頭および文書にて説明し、プライバシーに配慮することを伝え、同意を得た。</p><p>【症例紹介】 70代男性。身長170.0 ㎝、体重82.2 ㎏、BMI:28.4 ㎏/m2。診断名は、両下肢リンパ浮腫(Ⅱ期後期-Ⅲ期:国際リンパ学会分類)、既往歴に、左脛骨高原骨折術後、骨接合術後感染・左化膿性膝関節炎、腰部脊柱管狭窄症、高血圧、脂質異常症であった。MMSEは30点。仕事は、家庭教師と塾講師をされている。移動は、ロフストランド杖を使用して自立している。</p><p>【初期理学療法評価】 周径(㎝)(右/左)鼠径47.0/49.9、膝上20 ㎝ 46.5/51.3、膝上10 ㎝ 43.4/52.0、膝35.6/44.8、膝下10 ㎝ 40.5/50.1、足関節32.0/31.0、足背10 ㎝ 27.5/26.9。Short Physical Performance Battery(以下、SPPB):6点、握力(右/左)(㎏):33.8/33.0、30-second chair stand test(以下、CS-30):0回、10m歩行スピード(ロフストランド杖):快適速度12.49秒、最大速度8.26秒、6分間歩行試験(6WMT)(ロフストランド杖):364m。活動量の評価には、3軸加速度計であるオムロン活動量計(Active style Pro HJA-750C:OMRON社製)を使用した。介入日の翌日から4日間の平均をベースとした。平均歩数は3,045歩であった。栄養評価としてGeriatric Nutritional Risk Indexを用い114.8であった。</p><p>【複合的介入内容】 1日に2回のリハビリテーションを実施した。1つは、浮腫治療用の弾性包帯または弾性着衣を着用してコンディショニング運動や筋力増強運動、エアロバイクでの運動療法を実施した。もう1つはリンパ浮腫セラピストによる、スキンケア、用手的リンパドレナージ、多重包帯法による圧迫療法を実施した。</p><p>【最終理学療法評価(介入1ヶ月後)】 体重70.0 ㎏ 周径(㎝)(右/左)鼠径45.7/47.5、膝上20 ㎝ 44.1/45.5、膝上10 ㎝ 39.8/40.0、膝34.4/36.3、膝下10 ㎝ 33.1/36.9、足関節22.9/25.5、足背10 ㎝ 23.2/23.5。SPPB:10点、握力(右/左)(㎏):38.1/36.8、CS–30:13回、10m歩行スピード:快適速度10.56秒、最大速度7.44秒、6WMT(ロフストランド杖):429m。最終評価日を含む4日間の平均歩数は、17,671歩であった。</p><p>【考察】 両下肢リンパ浮腫患者に対する複合的介入は、周径の変化だけでなく運動機能や活動量の向上を認めた。今後の課題として、リンパ浮腫患者の運動機能の特徴を把握し、効果的なリハビリテーションやセルフマネージメント方法を提供できるよう症例数を集積していきたい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827249536
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_145
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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