急性期病院での長期入院脊髄損傷患者に対するリハビリテーション ~多職種と強く連携して最良の予後を目指した1例~

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  • O-152 骨関節・脊髄⑥

抄録

<p>【目的】 脊髄損傷(以下、脊損)患者はADLのゴールに個人差が大きいことから、急性期医療の限られた期間の中ではその後のリハビリテーション(以下、リハ)達成度を予想することは極めて困難と言われている。脊損患者に対するリハは運動機能の改善を図るだけではなく、呼吸・排痰介助に加え、心肺機能の改善も図っていく。この戦略は、多職種と連携することでマンパワー以上の効果が期待できる。今回、長期入院脊損患者を担当し、最善の予後を目指し多職種と強く連携したリハを展開したため報告する。</p><p>【説明と同意】 本発表はヘルシンキ宣言に基づき、本発表に関する内容説明を実施し、同意を得た。</p><p>【症例紹介】 70代男性、畑仕事に従事。入院前生活は独居でADL自立。軽トラック運転中に乗用車と衝突し横転し受傷。ドクターヘリ要請し当院救急搬送。頸髄損傷(C5/C6脱臼)の診断となり、同日に後側方固定術施行、継続的加療目的に当院入院。</p><p>【経過】 第2病日よりリハ開始。初期時、Frankel分類、ASIA分類はA。神経学的高位は感覚領域でC5/C5、運動領域でC5/C5。Zancolli上肢機能分類は右C6A、左C5B。呼吸状態不良で人工呼吸器管理。基本動作・ADL全介助。また、早期から仙骨部の褥瘡、胸水貯留による無気肺を合併。廃用予防、合併症予防目的として、ROMex, MSex、ポジショニングは転院まで継続して行なった。第4病日よりギャッジアップ座位訓練を開始。第13病日には呼吸器装着下での端座位訓練を開始。起立性低血圧の改善に伴い、第20病日からはリフターを使用し、リクライニング車椅子乗車開始。呼吸状態は徐々に改善し、第68病日に呼吸器離脱。第121病日にはTilt tableでの起立訓練開始。結果、第135病日では運動機能の改善乏しく、基本動作・ADL全介助のまま経過。合併症予防・改善の観点では、初期評価以降、著明な呼吸器合併症を起こすことなく経過。仙骨部の褥瘡に関しては、一時はDESIGN-Rスコア30点まで増悪したものの、最終的にはDESIGN-Rスコア27点と改善を認めた。その結果、褥瘡は皮弁術を行うことができる状態まで改善し、第136病日に他院転院となった。</p><p>【多職種連携・協働】 リハ開始と同時に、9つの職種(Dr, Ns, WOCN, OT, ST, Ph, RD, MSW, AIN)と連携・協働してアプローチを行なった。例として、Drはリハに同行し、負荷量の助言や低血圧に対してNadの投与を行なった。Nsは、リハの時間に合わせて経管栄養の時間調整や、定期的な体位変換(体位はカンファレンスを行い決定)を行なった。加えて、呼吸器回診、褥瘡回診、多職種カンファレンスに参加することで、多職種間で共通の目標を明確にした。</p><p>【考察】 受傷1年以内の高齢者脊損の死因として、1位が肺炎、2位が褥瘡からの敗血症、3位が腎不全、4位が心疾患と言われている。また、完全麻痺でも9割は損傷部に何らかの連続性が残っており、損傷後早期の荷重情報は運動機能回復に明らかな影響を与えると言われている。この2つの点から、運動機能回復に伴うADLの向上と合併症予防による生命予後の延長を目標とした。しかし、運動機能回復という目標は達成できなかった。目標のADLには至らず、初期には肺炎や褥瘡を引き起こしてしまったものの、多職種と連携・協働したことで、転院時には呼吸器系合併症無く、褥瘡は皮弁術を行うことができる状態まで改善したのだと考えた。</p><p>【理学療法研究としての意義】 今回、多職種と連携・協働したリハを展開した。しかし、多職種連携には人員不足問題や、スタッフの技量に不規則さがあるとコミュニケーションが不足し、目標を見失うことがある。どのような症例に対しても、常に多職種間で円滑に情報共有を行い、共通の目標を明確にすることで日々効率の良い医療を提供していくべきである。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827254144
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_152
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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