平行棒用オーバーヘッドフレームを用いた歩行練習の効果 ~生活期脳卒中片麻痺者一症例について~

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タイトル別名
  • O-025 成人中枢神経⑤

抄録

<p>【目的】 脳出血発症から1年が経過し、歩行時には麻痺側反張膝や分回し様歩行、歩行の非対称性がみられ、杖なし歩行では恐怖感や転倒不安感があり、下肢装具を都度調整するも、歩行の改善が難しい方を担当した。平行棒用オーバーヘッドフレーム(以下、免荷平行棒)はハーネスを着用することで、不安や恐怖感を軽減し、歩行対称性や推進力強化などを増加させる効果が報告されている。対象者にも同様の効果を期待し、どのような効果や歩行学習が得られたかをここに報告する。</p><p>【対象】 対象者は通所リハビリ利用の58歳の女性。診断名は右視床出血の左片麻痺。Br. stage上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅴ。深部・表在感覚は左上下肢軽度鈍麻。発症からの研究介入までの期間は405日。日常生活動作自立。FIM124点。歩行評価のFunctional Ambulation Categoriesは4点。歩行は油圧式足継手付き下肢装具とT字杖使用し、2動作前型歩行にて自立。歩行観察にて麻痺側反張膝や分回し様歩行、歩行の非対称性がみられる。本人より、杖無し歩行は恐怖感や転倒不安感が聞かれる。</p><p>【介入方法】 免荷平行棒の効果やハーネスの影響を検討するために、通所リハビリ(週2回利用)での通常理学療法以外に、通常の歩行、非免荷歩行、免荷歩行の3条件を1セットとし、封筒法にてランダム化を図った。計4セット行い6週間要した。それぞれの歩行は装具着用せず独歩にて行い、歩行練習は免荷平行棒内で行った。通常歩行は免荷を行わず、非免荷歩行はハーネスのみを着用。免荷歩行は先行研究を参考に体重の20%免荷にて実施。各歩行練習時間は10分間とした。</p><p>【評価項目】 歩行計測はシート式下肢荷重計(アニマ株式会社製)を歩行練習の介入前後使用し、快適歩行速度、歩隔、stride長、歩行率、両脚・単脚支持時間割合、歩隔対称性を抽出した。歩行条件と介入前後の比較に対応のあるt検定(paired t-test)を使用。歩行やアライメントの比較をビデオ撮影により検討した。歩行練習前後に本人の歩行実感や違和感等聴取した。</p><p>【結果】 非免荷歩行の非麻痺側立脚期介入前1.15±0.01秒、介入後1.12±0.04秒(P=0.01, P<0.05)。非麻痺側単脚支持期割合介入前75.7±2.5%、介入後72.3±0.89%(P=0.01, P<0.05)において有意な差が認められたものの、その他項目には介入前後での差はみられなかった。また歩容において歩行練習での顕著な差はみられなかったが、本人は免荷歩行や非免荷歩行では麻痺側の振り出しやすさを感じている様子であった。</p><p>【考察】 免荷歩行や非免荷歩行では麻痺側の振り出しやすさを感じていることから、免荷平行棒内でハーネスを着用することで、体幹垂直位を補助し、姿勢を制御するために体重を支持していた麻痺側下肢が推進しやすくなったと考えられる。心理的影響も大きく、6週間の介入後荷重練習や歩行練習に積極的に取り組まれたり、楽だからと日常で使用していた車いすの利用頻度が減ったりと日常生活への影響もみられた。</p><p> 今後は対象者に対し免荷量の調整や、転倒恐怖感の軽減、心理的影響、装具着脱や杖の有無、歩行対称性の工夫の必要性があると思われるので、更なる検討を行っていきたい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本研究内容はヘルシンキ宣言を遵守し対象者には本研究の主旨と測定内容に関する説明を十分に行い、了承を得た。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827261184
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_25
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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