回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の転倒回数に影響する因子の検討

DOI
  • 梶山 哲
    農協共済 別府リハビリテーションセンター
  • 伊東 祐輔
    農協共済 別府リハビリテーションセンター
  • 狩生 直哉
    農協共済 別府リハビリテーションセンター
  • 加藤 和恵
    農協共済 別府リハビリテーションセンター
  • 戸髙 良祐
    農協共済 別府リハビリテーションセンター 大分大学 福祉健康科学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • O-028 成人中枢神経⑤

抄録

<p>【目的】 回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ)における疾患別の転倒率は、整形疾患が12.2%であるのに対し、脳卒中は21.8%と多い。これまでに転倒有無に関する研究は多く報告されているが、転倒回数に影響する因子を報告した研究は少ない。脳卒中では、転倒者のうち36.2%が2回以上転倒していることから、脳卒中患者への転倒予防の取り組みが求められている。そこで本研究では、転倒回数に影響する因子について分析する。</p><p>【方法】 2021年4月から2023年3月までの期間に当法人回復期リハを退院した脳卒中患者401名を対象として、電子カルテのデータベースを用いて後方視的に調査した。</p><p> 除外基準は入院期間が10日以内で退院した者とした。解析は、非転倒者を含めた転倒回数に影響する因子(モデル1)と非転倒者を除いた転倒者のみでの転倒回数に影響する因子(モデル2)についてそれぞれ分析した。説明変数は、年齢、性別、入院時運動FIM、入院時認知FIM、入院時FBS, SIAS下肢機能、リスク対策(センサーマット等)有無、ナースコール有無とし、転倒回数を目的変数とした重回帰分析(強制投入法)を行い、関連する因子を求めた。統計上の有意水準は5%とした。</p><p>【結果】 モデル1の転倒回数を目的変数とした重回帰分析の結果(R2=0.11)、性別(β=0.31, p<0.001)、入院時認知FIM(β=0.02, p<0.05)、入院時FBS(β=-0.01, p<0.05)が関連因子として抽出された。</p><p> モデル2の重回帰分析の結果(R2=0.15)、性別(β=0.53, p<0.05)、入院時認知FIM(β=0.03, p<0.05)が関連因子として抽出された。</p><p>【考察】 本研究は、回復期リハにおける転倒回数に関連する因子を後方視的に分析した。その結果、モデル1では、男性で、入院時認知FIMが高く、入院時FBSが低いほど転倒回数が増加する可能性が示唆された。モデル2では、男性で、入院時認知FIMが高いほど転倒回数が増加する可能性が示唆された。入院時FBSはモデル1のみ関連因子として抽出されたことから、非転倒者を含めた場合は転倒回数に有意に影響を与えるが、転倒者のみでの検討では影響が小さいことが明らかとなった。このことから2回目以降の転倒には、バランス機能の影響を考慮しつつもその他の転倒予防策を多角的な視点から導入する必要があると考えられる。入院時認知FIMについては、入院時に認知機能良好と判断された場合、リスク対策以外の転倒予防対策(ベッド周辺の環境調整、動作指導等)に留まる可能性が高い。さらに回復期リハでは身体機能が回復途中にあるため、現状の身体機能から患者自身がどこまで安全に動けるかといった自己動作能力評価についても経験的に不十分になりやすい状況が考えられる。したがって、リスク対策の判断の難しさや自己動作能力評価の問題が転倒回数増加の因子の背景として考えられる。</p><p>【まとめ】 転倒回数に関連する因子として、性別、入院時認知FIM、入院時FBSが抽出され、これらの因子を考慮して転倒予防策を講じる必要がある。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827266304
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_28
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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