ウェアラブルセンサーによるリアルタイムフィードバックを用いた歩行練習の即時効果: ラクナ梗塞患者1例における検討

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タイトル別名
  • O-026 成人中枢神経⑤

抄録

<p>【はじめに】 歩行に直接介入する方法として、バイオフィードバック療法を用いた歩行練習が挙げられる。神経障害患者の歩行に対し、フィードバックを行うことで、歩行速度や歩幅、関節角度、バランス、可動域の改善が報告されているが、臨床現場での検討は少ない。本研究の目的は、ラクナ梗塞患者に対するウェアラブルセンサーによる歩行中の関節角度のリアルタイムフィードバックを用いた歩行練習の即時効果を検討することである。</p><p>【対象と方法】 対象はラクナ梗塞(左被殻、発症後21日)の入院患者1名(88歳、男性)とした。身体機能は、歩行速度0.90m/s、Brunnstrom stage下肢Ⅵ、Fugl-meyer assesmentの下肢機能33/34点、バランス10/14点、FBS40/56点、TUG12.30秒であった。リアルタイムフィードバックを用いた歩行練習の前後で10m歩行テストを実施し、フィードバックによる即時的な歩容の変化を分析した。歩行条件は、通常歩行(C条件)、立脚後期の足関節底屈角度(A条件)、下肢全体の伸展角度(T条件)をそれぞれ強調した計3条件とした。歩行練習は30mの歩行路にて各条件を1分間ずつ、同日内に実施した。歩行練習前の歩行テストでは通常通りの歩行を行い、練習後の歩行テストではフィードバックで練習した歩容を順守させた。歩行テストは歩行練習前後に各2回ずつ実施し、仙骨後面、両側の大腿と下腿の前面、足背部に固定した慣性センサー(Mtw Awinda)を用いて計測した。快適歩行時の関節角度を20%増した角度を目標値とし、目標値に達した際に音声でフィードバックした。A条件では「音が鳴るように足で蹴って歩いてください」T条件では「音が鳴るように脚全体を後ろに伸ばして歩いてください」と指示した。歩行テストのデータは各歩行の中央5歩行周期を解析し、歩行速度、ストライド長、ケイデンス、立脚後期における足関節底屈角度、下肢伸展角(矢状面における大転子と外果を結ぶ線と、垂直線のなす角度)を算出した。2試行の平均値を代表値とし、歩行練習前後の各指標の変化を比較した。</p><p> 対象者には説明を行い、同意を得た後に実施し、ヘルシンキ宣言に則り倫理的配慮に基づいてデータを取り扱った。なお、発表に際し、所属機関の倫理委員会の承認(倫委第20-8号)を得た。</p><p>【結果】 歩行速度はC条件(Δ0.5 m/s, 6.3%増)、A条件(Δ0.6 m/s, 7.5%増)、T条件(Δ0.2 m/s, 2.7%増)となり、A条件で最も歩行速度の増加がみられた。ストライド長はフィードバック下で増加(A条件14%増、T条件15%増)し、ケイデンスは低下(A条件6%減、T条件11%減)した。A条件では足関節底屈角度(Δ2.0°、15.8%)、T条件では下肢伸展角度(Δ2.8°、14.7%)がそれぞれ増加した。</p><p>【考察】 今回はラクナ梗塞患者に対して歩行中の関節角度のリアルタイムフィードバックを行い、歩行速度は即時的に増加し、フィードバックの指標に応じて歩容が特異的に変化した。他条件と比較して本症例では、A条件での歩行速度が即時的に増加した。立脚後期での蹴り出しをフィードバックしたA条件では、ケイデンスを保ちながらストライドを延長することで歩行速度を増加させることができたと考えられる。また、身体機能および麻痺肢の下肢筋機能も良好であり、足関節底屈筋が優先的に選択された可能性も考えられる。本研究は単一症例における即時効果の検討にとどまるが、客観的な指標を用いた歩行練習の臨床応用の実現可能性を示すとともに、継続した介入により歩容の改善に繋がると考える。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861714827275904
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_26
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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