成熟ラットを用いたレーザ照射の鎮痛効果の検討

  • 石橋 直也
    富山大学大学院 医学薬学教育部 応用薬理学研究室 帝人ファーマ株式会社 生物医学総合研究所 医療技術研究所
  • 歌 大介
    富山大学 学術研究部薬学・和漢系 応用薬理学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Study of Analgesic Effects of Laser Irradiation in Rats

抄録

<p>低出力レーザ治療(low-level laser therapy: LLLT)は,筋肉・関節の慢性非感染性炎症による疼痛の緩和に使用されている.しかし,作用機序の統一的な見解は存在しない.鎮痛作用機序を研究する上で,脊髄後角は痛覚情報が密に伝達される重要な部位であるが,LLLTの効果を脊髄後角で検証した報告はほとんどない.本研究では,坐骨神経へのレーザ照射が皮膚への機械刺激により誘発される脊髄後角表層ニューロンの発火に与える影響を,in vivo細胞外記録法により検証した.単一ニューロンの発火を記録するために,ラット脊髄後角表層に電極を刺入した.レーザ照射の前後で,0.6 gから26.0 gの種々のvon Frey filament(vFF)を用いて坐骨神経が支配する皮膚受容野に機械刺激を加え,脊髄後角表層ニューロンにおけるvFF誘発発火を記録・解析した.レーザ照射方法として,皮膚を切開し露出させた坐骨神経に直接照射する場合と,皮膚を切開せず坐骨神経に経皮的に照射する場合を検証した.その結果,坐骨神経に直接レーザ照射した場合,照射前に対し照射後の26.0 gの vFF誘発発火頻度が有意に抑制され,その効果は3時間持続した.照射15分後の比較では,26.0 gに加えて15.0 gのvFF誘発発火頻度が選択的に抑制された.尚,偽照射では発火頻度は変化しなかった.経皮的にレーザ照射した場合も同様の傾向が確認され,照射前と照射15分後の発火頻度の比は直接照射と経皮的照射で同等だった.フォトダイオードセンサを坐骨神経近傍に埋め込み経皮的にレーザ照射したところ,坐骨神経に到達するパワー密度は照射条件の約10%に減衰していた.病理組織学的評価では,直接レーザ照射による坐骨神経の損傷は認められなかった.15.0,26.0 gのvFFは侵害性(痛覚)刺激に相当すると考えられるため,レーザ照射は痛覚刺激により誘発された発火を選択的に抑制したことを示しており,主に痛覚情報を伝達するAδ及びC線維の両方もしくはいずれかの神経活動を抑制したと考えられる.LLLTは現在保険適用がある炎症による疼痛に加え,Aδ線維及びC線維が病態生理メカニズムに関わる疾患に適応できる可能性がある.</p>

収録刊行物

参考文献 (40)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ