低Na血症の考え方

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  • テイNa ケツショウ ノ カンガエカタ

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抄録

低Na血症は 135 mEq/I未満と定義されており,日常診療でよく遭遇する電解質異常である。 急性に低Na血症になった時と,慢性になった時では症状に違いがあり,慢性ではしばしば 120 mEq/lになっても症状を認めない。 高齢者では低Na血症の頻度が高く,その原因として,浮腫性疾患(うっ血性心不全,非代償期肝硬変)の存在,腎Na保持能低下,Na摂取不足と利尿剤使用によりNa排泄増加,腎の尿濃縮能の減弱に伴う抗利尿ホルモン(ADH)分泌亢進がある。 低Na血症となることで入院期間が延長するほか,低Na血症が骨折や死亡率増加にも関連しているといわれている。低Na血症の診断には血漿浸透圧を確認することが重要であり,それによって高張性,等張性,低張性に分類される。 低張性低Na血症がほとんどであり,その原因として抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が重要である。SIADHは,ADHの分泌が抑制されるべき低血漿浸透圧にも関わらずADHが不適切に分泌され,低Na血症を呈する疾患である。SIADHの治療は水制限であるが,鉱質コルチコイド反応性低Na血症 (MRHE)の治療は生食・鉱質コルチコイド投与と大きく異なるため,治療に際しては両者の鑑別が必須である。 低Na血症の治療においては, ①低Na血症に伴う症状があるか? ②発症してからどの位経過しているのか? ③低Na血症は現在も進行しているのか? ④低Na血症の是正による浸透圧性脱髄症候群(ODS)を起こすリスクファクターがあるか? の 4 点を確認することが重要である。 特にODSを発症させることがないように血清Na値は 0.5 ~ 1.0 mEq/l/hより速く補正しないことや,1 日に血清Na値を 10 mEq/l以上上昇させないことに気をつけて補正すべきである。

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