内観に包含される両価的機能

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書誌事項

タイトル別名
  • ‘I don’t know whether I wish to be cured or not’ – The Effects of Naikan on Ambivalent Functions: What Symptoms Tell Us
  • 「治りたいのか、治りたくないのか分からない」症状が教えてくれること

抄録

<p> 神経性無食欲症など難治性の難しい症状を抱えて「食べたいのか食べたくないのか分からない」「出かけたいのか出かけたくないのか分からない」と訴え、身動きできない苦痛に縛られる状況がある。日々のことや人生を話題にすると「子ども時代に父の強い言葉で母が泣くのを見るのが辛かった」「母には離婚を勧めたが聴いてはもらえなかった」など、継続的に目にした幼い日の母の姿が鮮明に脳裏に刻まれ、拭い去ることを困難にしていた。母を泣かした父への不満や、父に言われ放題で受け入れている母に対する無力感が、幼い日の残像のように重いしこりとなっていた。日々のこと、心の痛みなどを一つずつ吐き出す作業が続いた。一進一退する症状に安定した改善が訪れたのは、配偶者の転勤でクリニック受診が困難になった時や、体調不良が悪化して入院治療を勧められた時だった。内観という精神療法を自分で受けると決断できた感動や、自分の代わりに親が内観に行ってくれた喜びが、囚われていた苦しさの解消と、自由な意志で行動できる力を回復させた。主体的に内観に臨むことや、愛着にまつわる情動体験の修正が身動き不能状態からの脱却と、症状改善を後押しする力となっていた。症状の改善に向き合うことは、家族関係の新たな一歩を踏み出す好機になったとも考えられた。</p>

収録刊行物

  • 内観研究

    内観研究 29 (1), 43-52, 2023-09-01

    日本内観学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861925380563328
  • DOI
    10.34593/jna.29.1_43
  • ISSN
    2435922X
    2432499X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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