山形県肝疾患診療連携拠点病院の肝臓病相談における 経年的な疾病構造および相談内容の変化に関する検討

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  • Changes in the composition of liver diseases and contents of consultation at a regional core center for liver disease in Yamagata Prefecture

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抄録

【背景】 近年のウイルス性肝炎の診断法や治療法の目覚ましい進歩に伴い、社会における肝臓病の疾病構造に変化が起きており、肝臓病患者の相談内容にも変化が生じている。山形大学医学部附属病院・肝疾患相談室で蓄積された肝臓病に関する相談記録を分析して、今後の肝疾患相談室での適切な支援の在り方について検討を行った。 【対象と方法】 2010年10月から2022年3月の期間内に本院の肝疾患相談室を利用した相談者429名を対象とした。肝疾患相談記入記録から、対象期間を経年的に3つの期間に設定し、相談対象者の疾患や病因、相談内容や相談対応の内訳の変遷等について、集計して分析を行った。 【結果】 相談対象者の疾患について、第1期から第3期にかけて肝炎ウイルスキャリア、肝炎の件数が増加し、慢性肝炎と肝がんの件数が減少していた。相談対象者の病因について、第1期から第3期にかけてB型肝炎ウイルス、脂肪肝が増加し、C型肝炎ウイルス(HCV)が減少していた。これはHCVに対する経口直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場によりC型肝炎の治癒が可能となり、相談対象者の疾患や病因が変化したことが要因と考えられる。相談内容について第1期から第3期まで不安の割合が多いまま推移していた。肝疾患は長期的な治療が必要な疾患であり、不安に伴い肝疾患相談室を利用する相談者が多かったためと考えられる。相談対応について、第1期から第3期にかけて経時的に情報提供、助言が増加し、傾聴が減少していた。第1期は慢性肝炎や肝がんなど重篤な疾患に関する相談が多かったことが要因であると考えられる。 【結論】 慢性肝炎や肝がんなどHCVが主な病因とされる重篤な疾患の相談は、DAAの登場により経時的に減少していた。肝炎医療コーディネーターからの正確な情報提供や助言と共に、長期におよぶ肝疾患治療や療養に対する様々な不安に寄り添いながら、時代に応じた肝疾患相談室の役割を果たしていく必要がある。

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