歯周治療による咀嚼機能回復は血糖コントロール改善に寄与するか?

DOI
  • 三辺 正人
    文教通り歯科クリニック 神奈川歯科大学歯学部基礎歯科学系病理・組織形態学講座環境病理学分野
  • 山本 裕子
    神奈川歯科大学短期大学部歯科衛生学科
  • 河野 寛二
    こうの歯科クリニック
  • 中澤 正絵
    医療法人盟陽会富谷中央病院歯科
  • 山本 龍生
    神奈川歯科大学歯学部社会歯科学系社会歯科学講座口腔衛生学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Does the Restoration of Masticatory Function by Periodontal Treatment Contribute to Improving Glycemic Control?
  • ―Consideration from the Viewpoint of Improving Dietary Habits and Nutritional Balance―
  • ―特に食習慣・食栄養バランス改善の点からの考察―

抄録

<p> 歯周病が全身の健康に影響を及ぼす経路については,局所歯周病巣由来の細菌,炎症性サイトカインやメディエーターが全身循環や消化管を経由して遠隔組織に影響を与える経路とともに,歯周病由来の歯の動揺や喪失,咬合痛による咀嚼能の低下を伴う不良な食習慣・食栄養状態の2つの経路が考えられる.本総説では,歯周治療による咀嚼機能回復が血糖コントロールをはじめ全身の健康に寄与するかという観点から,特に食習慣・食栄養改善という点に注目して文献的考察を行った.歯周病患者の咀嚼能と血糖コントロールおよび全身的健康の改善に関するエビデンスは,現状では少ないもののその重要性は十分に認識されていると考えられる.食習慣・食栄養については,咀嚼機能の低下と関連する食習慣や食栄養バランスの悪化は,歯肉炎症や口腔フローラのDysbiosisを助長することから歯周病の修飾リスク因子であることが示唆される.一方,抗炎症食品の摂取は,プラークの付着量や口腔清掃の有無と無関係に歯周組織の炎症を軽減することが明らかにされており,抗炎症性の健康食パターンは,標準的な口腔清掃や歯周治療の効果を増強すると考えられる.生活食習慣改善と歯周病ケアを医科歯科連携して組み合わせて行うプログラムを実践することにより,歯周病臨床症状とともに血糖コントロールの有意な改善効果が示されている.以上のことから,生活習慣病という視点から歯周病を捉えた場合,歯周病発症進行リスク因子への対応として食習慣および食栄養指導が必要であると考えられる.また,歯周病と糖尿病は双方向性の関係があり,双方の視点に立った咀嚼機能改善に関連した食習慣・食栄養指導は,疾病負荷の観点からも合理的と考えられる.</p>

収録刊行物

  • 日本歯科保存学雑誌

    日本歯科保存学雑誌 67 (1), 10-19, 2024-02-29

    特定非営利活動法人 日本歯科保存学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862268805667328
  • DOI
    10.11471/shikahozon.67.10
  • ISSN
    21880808
    03872343
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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