出雲仁多方言における母音をめぐる音変化

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タイトル別名
  • Historical Study on the Vowels in Izumo-Nita Japanese

抄録

<p>島根県出雲地域で話される出雲仁多方言における母音をめぐる音変化を,古代語との比較にもとづいて,相対年代とともに推定した。仁多方言では,中舌母音化*u, *i > ɨと母音の低下*u > o, *i > eに加え,rの隠在化と呼ばれる変化が起こった。現代仁多方言の形式のほとんどが,古代語の形式を祖形とし,その祖形が上述の変化を経て成立したものと考えられる。一方,古代語との音対応からは例外的と思われるkusoo「薬」,sɨrosɨ「印」,soso「裾」という3形式は,先行研究の成果に照らすと,祖語の*oを保持した形式である蓋然性が高いことが明らかになる。このことは,服部(1978–79 [2018])が中央方言で起こったとした狭母音化*o > uという変化を,仁多方言が経験していないことを示唆する。他の本土諸方言においても,中央方言で狭母音化によって失われた祖語*oや*eが保持されている可能性があり,それらについて比較言語学的観点から再検討していくことがこの分野の今後の課題である。</p>

収録刊行物

  • 言語研究

    言語研究 165 (0), 1-32, 2024

    日本言語学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862268820994688
  • DOI
    10.11435/gengo.165.0_1
  • ISSN
    21856710
    00243914
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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