薬理遺伝学検査に基づく重症薬疹発症リスクの予測

書誌事項

タイトル別名
  • Pharmacogenetic testing for prevention of severe cutaneous adverse drug reactions

抄録

<p>薬理遺伝学的検査は,薬剤の有効性と副作用のリスクを予測することにより,患者に利益をもたらす.臨床現場で有用な薬理遺伝学バイオマーカーには,薬物代謝酵素および薬物トランスポーター遺伝子,ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子がある.HLAはヒトの免疫に関与する重要な分子であり,かねてより,薬疹,薬物性肝障害,無顆粒球症などの副作用発現リスクとの関連について解析されてきた.HLAは多くの遺伝子から構成されており,各遺伝子には数十種類の型(アレル)があり,副作用と関連するHLAアレルが多数報告されている.HLAアレルと副作用リスクとの関連におけるオッズ比は約5から数千であり,副作用のリスクに極めて大きな影響を与えることが示されている.したがって,薬物療法開始前のHLA遺伝子検査は,副作用の回避に大きく貢献することが期待されるが,検査の臨床的有用性を示すためには,検査結果に基づく医療介入の効果を前向きに示す必要がある.筆者らは,HLA-A31:01検査結果に基づく治療介入がカルバマゼピン誘発薬疹の発症率に及ぼす影響を検討するため,前向き臨床試験GENCAT研究を実施した.HLA-A31:01陽性患者にはバルプロ酸などの代替薬が投与された結果,カルバマゼピン誘発薬疹の発症率が約60%減少した.臨床的有用性が示された薬理遺伝学検査が,診療ガイドラインに反映されることにより,より安全で適切な層別化医療の確立につながることが期待される.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 159 (2), 90-95, 2024-03-01

    公益社団法人 日本薬理学会

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