CNF複合樹脂製造プロセスの開発

  • 今井 貴章
    大王製紙株式会社 生産本部新素材研究開発室

書誌事項

タイトル別名
  • Development of CNF Reinforced Plastics Manufacturing Process

抄録

セルロースナノファイバー(CNF)は,軽量・高強度・低線熱膨張・高粘性・透明性・ガスバリア性等,紙パルプにはないさまざまな特異的性質を有し,近年注目を集めている次世代バイオマス先端素材である。CNFのさまざまな特異的性質を利用し,様々な用途展開が提案されており,中でも軽量・高強度の特性を活かして,樹脂やゴム材料等と複合化し,自動車部材や家電筐体等の構造材料として活用が期待されている。<br>軽くて強い特徴を持つCNFの用途としてユーザーニーズが非常に高いCNF複合樹脂について,スケールアップ可能な条件で,原料からCNF複合樹脂ペレットまでを一貫生産するプロセスの開発を行い,従来の方法よりもコストとCO2を削減できる技術開発を行った。<br>結果,薬液塗工した紙を連続的に変性する技術と,混練原料・装置・運転条件の調整による生産性の高いCNF複合樹脂の製造技術(φ48 mm装置で250 kg/h,CNF濃度67%複合樹脂)を確立し,一貫生産可能なプロセス技術を見出した。<br>CNF濃度10%にPPで希釈した複合樹脂を用いて,リサイクルを想定した処理を行った結果,処理回数増加に伴い着色が進行するものの曲げ物性の低下はなかった。同様に,化学安定性試験を行った結果,PPよりもCNF複合樹脂の方が着色し易いものの,機械的物性(曲げ弾性率,引張弾性率)および,質量・寸法変化はPPとほぼ同等の結果であった。2020~2022年にCNF複合樹脂を100以上の企業や機関(主に,自動車用途,日用雑貨用途,建材用途,家電用途)に提供し,評価を受けることで必要な改善項目を抽出できた。抽出した課題(分散性,耐衝撃性,成形性,着色性等)の改善を引き続き進めていく。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 78 (2), 116-120, 2024

    紙パルプ技術協会

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