水辺の思考/アイリッシュ・マニエリスム : 科研費報告書II(序2 )

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  • Irish Mannerism・A Thought on the Waterside

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抄録

極西アイルランド、その精神の地下水脈には一四〇〇年にも亘り静かに脈打つ一つの思考がある。〈水辺の思考〉である。その起源は六世紀半、全土の水辺で一斉に開花した各修道院が水路のネットワークによって一つに結ばれ発生をみた学術都市群共同体にある。その特徴は大陸ヨーロッパの基盤、陸路の思考=直線・合理的なユークリッド原理に反定立する水路の思考=円環・非合理(自然)的なフラクタル原理にある―大西洋沿岸の海岸線のように、蛇行を繰り返す思考の流れが内部に無数の渦巻きを形作りながら一本の線で結ばれる。『ケルズの書』に表れる芸術様式、大陸のマニエリスムとも一線を画す極西のケルト固有の〈水辺のマニエリスム〉の誕生である。その思考様式はイェイツにより見出され、文芸復興運動の基軸に据えられることで復権をみた。その後シングからジョイスへと継承されることでアイルランド文学の新潮流を形成していく。本論の目的は以上の命題を検証していくことである。なお、本論は近日刊行予定の『水辺の思考/アイリッシュ・マニエリスム』の「序」に相当する部分の抜粋である。

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