エトレチナートで症状の改善がみられた<i> AQP5</i> 遺伝子変異によるボスニア型掌蹠角化症の 1 例

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Palmoplantar Keratoderma, Bothnian Type with <i>AQP5 </i>Mutation

抄録

<p>37 歳,男性。幼少期より掌蹠,手背,足背の角化を伴う紅斑があり,当科初診の 4 年前より,近医にてステロイドもしくは活性型ビタミン D3 製剤の外用治療が行われたが難治であった。徐々に皮疹は前腕,肘部まで拡大したため当科を受診した。父方祖母と父の掌蹠に病変があったようだが詳細は不明であった。受診時,掌蹠にびまん性の角化性紅斑がみられ,手背には光沢を有する常色~橙色の丘疹が多数みられ,一部は集簇し局面を形成していた。同部の病理組織像は,過角化と顆粒変性を伴わない表皮肥厚がみられ,臨床像と併せて transgrediens を伴うびまん性掌蹠角化症と考えた。患者血液から全エクソーム解析を行い,AQP5 遺伝子にヘテロ接合性に病原性のミスセンス変異を検出し,ボスニア型掌蹠角化症(palmoplantar keratoderma, Bothnian type;以下 PPKB)と診断した。エトレチナート 20 mg/day 内服を開始し,手背から前腕の丘疹は徐々に平坦化した。PPKB は,AQP5 遺伝子変異による常染色体顕性(優性)遺伝を示す稀なびまん性掌蹠角化症の一型で,確定診断には家族歴の聴取,臨床像,病理組織像の検討に加え,遺伝学的検査が必要である。本邦で頻度の高い長島型掌蹠角化症とは遺伝形式が異なるため検査を行う意義は大きいと考える。確立された治療法はないが,自験例では少量エトレチナート内服で角化性局面の改善がみられた。</p>

収録刊行物

  • 西日本皮膚科

    西日本皮膚科 86 (1), 30-34, 2024-02-01

    日本皮膚科学会西部支部

参考文献 (11)*注記

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