メチル水銀曝露による脳内小胞体ストレス依存性細胞死の薬物制御
書誌事項
- タイトル別名
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- Chemical modulation of endoplasmic reticulum stress-mediated apoptosis by MeHg exposure <i>in vivo</i>
抄録
<p>【目的】メチル水銀(MeHg)は水俣病のように重篤な中枢神経障害を引き起こすが,有効な治療法はおろかその毒性発現機構も定かでない.一方で我々は,MeHgによる神経毒性の機序解明に取り組む中で,MeHgが小胞体(ER)ストレスを惹起し,Unfolded Protein Response(UPR)と呼ばれる一種のストレス調節機構を活性化することを見出している.本研究では,MeHg毒性におけるERストレスの負の影響を明らかにすることを目的とし,MeHg 曝露に伴うERストレス性細胞死シグナルの経時変化を解析するとともに,それに対する化学シャペロン4-フェニル酪酸(4-PBA)の影響について動物レベルで検討した.</p><p>【方法】ERストレス下で発現が誘導されるER stress-activated indicator(ERAI)を導入したマウスに,MeHg含有水(終濃度50 ppm)を一定期間自由飲水させた.MeHg中毒の原因病巣の一つである一次体性感覚野について,脳切片の免疫蛍光染色からERストレスおよびUPR活性化を,TUNEL染色からアポトーシスを定量評価した.</p><p>【結果・考察】MeHg曝露に伴いERAI陽性細胞が増加し,ERストレスセンサー分子IRE1αおよびPERKのリン酸化が亢進した.加えて,TUNEL陽性細胞の増加と一致してPERK下流のアポトーシス誘導因子CHOP陽性細胞が増加した.一方で4-PBA投与(120 mg/kg/day)により,ERAI陽性細胞と同様にIRE1αおよびPERKのリン酸化が有意に抑制された.さらにはCHOPおよびTUNEL陽性細胞も有意に減少した.以上の結果から,MeHg曝露に伴いERストレス誘導性アポトーシスが促進されることが明らかとなり,4-PBAがERストレス抑制作用によってMeHg中毒の予防に一部有効な可能性が示された.</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P1-053S-, 2023
日本毒性学会