ポリスチレン粒子がCaco-2細胞のタイトジャンクションに及ぼす影響
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- 大川 千明
- 大阪公立大学獣医学科毒性学教室
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- 中川 博史
- 大阪公立大学獣医学研究科毒性学教室
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- Md. Anamul HAQUE
- 大阪公立大学獣医学研究科毒性学教室
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- 西村 和彦
- 大阪公立大学獣医学研究科毒性学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- Effect of polystyrene particles on tight junctions in Caco-2 cells
抄録
<p>環境中でのマイクロプラスチックの増加が問題視されている。近年、直径0.1 µm程度のポリスチレン粒子を実験的に長期間マウスに暴露した際、腸管組織に蓄積することが報告された。腸管は外界からの異物暴露に対して、腸管バリア機能を有し、これは腸粘膜細胞のタイトジャンクション(TJ)が重要な役割を持つ。そのため、本研究ではヒト結腸癌由来細胞株Caco-2細胞を用いてポリスチレン粒子処置がTJに及ぼす影響について評価した。Caco-2細胞を長期間培養後に、直径0.1 µmの表面にアミノ基修飾のされた蛍光ポリスチレン粒子を24時間処置した。生存率をトリパンブルー染色で、細胞毒性をMTT法で、腸管バリア機能を経上皮電気抵抗(TEER)で評価した。また、抗ZO-1抗体を用いた免疫蛍光染色で、TJの形態を観察し、TJを構成する膜貫通タンパク質であるOccludin、Claudin 1のmRNA発現量をリアルタイムRT-PCR法で測定した。2 µg/mlから200 µg/mlの範囲において、ポリスチレン粒子処置による生存率の低下や細胞毒性は見られなかったが、200 µg/mlのポリスチレン粒子処置は、TEERの低下を引き起こしたことから、腸管バリア機能の低下が示唆された。ZO-1蛍光染色において、control群では細胞周囲にはっきりとした輪郭として観察されたTJが、ポリスチレン粒子処置群では、淡く途切れがちとなり、TJの形態の変化が見られたことからも、バリア機能の低下が支持された。ポリスチレン粒子処置により、Occludin、Claudin 1のmRNA発現量の低下が認められことから、TJを構成するタンパク質が減少し、細胞間隙が広がったと考えられた。以上の結果から、直径0.1 µmのポリスチレン粒子は、TJ関連遺伝子の発現減少を引き起こし、腸管バリア機能を低下させると考えられた。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P3-225-, 2023
日本毒性学会