Cl含有薬物の選択的検出法の開発
書誌事項
- タイトル別名
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- Development of a specific detection method for Cl-containing drugs
抄録
<p>【目的】塩素(Cl)は17族元素で、特徴的な同位体パターン(35Cl:37Cl=76:24)を有し、汎用薬の構造に含まれる元素である。これらの薬物は自殺目的でも使用され、死後代謝することも報告されている。死後代謝物(PMs)は生前の代謝物と異なり、代謝物を対象とした分析条件では検出が難しいため、Clを手掛かりとしてPMsを選択的に検出ができれば、法中毒学分野において有用な分析法となり得る。本研究では、Cl同位体パターンスクリーニング(Cl-IPS)と名付けたCl含有薬物の選択的検出法を開発し、Cl含有薬物を用いて評価した。さらにCl含有薬物が典型的な死後代謝であるヘモグロビン(Hb)を介したFenton反応により、どのようなPMsに分解されるかを検討した。【方法】Diazepam(DZP)とTriazolam(TZL)をモデル化合物とし、各溶液をLC-Q-Orbitrap-MSで測定、Cl-IPSで解析した。血液と尿にDZPとTZLを添加、アセトニトリルで抽出後測定し、Cl-IPSで解析した。DZPとTZLのHb/Fenton反応液を測定し、Cl-IPSで解析した。その他Cl含有薬物20種類を測定し、Cl-IPSで解析した。【結果及び考察】DZPとTZLはCl-IPSで選択的に検出され、血液と尿中でも特異的に検出が可能であった。DZPとTZLのHb/Fenton反応液をCl-IPSで解析したところ、親化合物及びPMsが選択的に検出された。また、そのマススペクトラムから、生前では生じ得ないPMsの同定が可能であった。Cl含有薬物20種類について、Cl-IPSによりいずれの化合物においても特異的に検出することが可能であった。従って、Cl-IPSにより血液中や尿中に含まれるCl含有薬物やその死後代謝物の特異的検出が可能となり、法中毒学の実務において有用な分析法となると考えられた。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P3-270-, 2023
日本毒性学会