Prototheca 属4種を用いたマウス乳房炎モデルの病理学的解析

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  • Pathological study of mouse mastitis model infected with four different Prototheca species

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抄録

Prototheca 属は、クロレラ科の1属であり、植物表面、動物の消化管内、土壌、湖沼、汚水中などの湿潤環境に広く分布している。Prototheca 属は牛乳房炎の原因菌でもあり、P. bovis, P. ciferrii, P. blaschkeae を原因する乳房炎では乳房の腫脹、硬結、乳汁中の著しい凝塊、乳量低下などの症状がみられる。1990 年代以降Prototheca 属による牛乳房炎の報告は増加傾向にあり、日本を含む世界各国で確認されている。本研究では、異なるPrototheca 属4種の病原性に関する知見を得るために、免疫不全モデルマウスや健常な授乳期マウスの乳腺組織に各Prototheca 属を実験的に感染させて病理学的比較検討を行った。P.ciferrii とP. bovis、P. blaschkeae、P. vistulensis を実験に用いた。まず、未経産のSCID マウスに尾静脈から接種することで、血流感染におけるPrototheca 属の病原性と各臓器への親和性を病理学的に検討した。次に、授乳期のBALB/c マウス乳腺にPrototheca 属菌を乳頭口接種し、乳房での感染成立および乳飲みマウスへの経口的感染の有無を病理学的に検討した。SCID マウスへの感染実験の結果、P. bovis のみがマウスヘ感染性を示し、脳と腎組織に病変を形成した。乳腺組織へのP. bovis の血行性移行は認められなかった。授乳期BALB/c マウスに対する乳頭口接種では、P. bovis を接種した乳腺で肉眼的に褪色、腫脹、硬結感が認められ、組織学的に乳腺上皮細胞の消失と乳腺腔内で著しい増殖がみられた。P. ciferrii およびP. blaschkeae 接種乳腺では、肉眼的に乳腺組織の褪色が認められ、組織学的には菌の軽度増殖を伴う巣状の炎症がみられた。P. bovis、P. ciferrii およびP. blaschkeae はBALB/c マウスの泌乳期乳腺へ上行感染し、乳腺炎を引き起こした。牛乳房炎の原因菌としての報告が少ないことから病原性が不明であったP. ciferrii とP. blaschkeae は、少なくともマウス泌乳期乳腺組織に中等度炎症を引き起こすことがわかった。

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