中川李枝子『いやいやえん』論

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  • On NAKAGAWA Rieko's Iyaiyaen

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抄録

中川李枝子のデビュー作『いやいやえん』は、数々の賞を受賞するなど高く評価される一方、教育的すぎる、或いは子どもの観察記録に止まるとの指摘もなされてきた。本稿では、その物語性を明らかにするために、初出である同人誌『いたどり』版からの改稿をふまえ、全体の構成と各話の特徴を分析することを試みた。改稿により、刊行版『いやいやえん』は、動物等がより生き生きと描かれるようになるとともに、作品順序を一部変え、しげるを主人公とする物語として整えられた。保育園の約束を守らないきかんぼうぶりはそのままに、しげるの行動力は増していく。『いやいやえん』は、その個性のままに成長していくしげるの物語になっている。また、『いやいやえん』各話は、空想の描かれ方によって3つに分類することができるが、後から追加された「やまのこぐちゃん」は、他の6 話とは異なる点を持つ。『いやいやえん』は、中川の作家としての出発点であるとともに、その後の作風の変化をも内包した作品なのである。

収録刊行物

  • 梅花児童文学

    梅花児童文学 (31), 54-69, 2024-03-15

    梅花女子大学・大学院児童文学会

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