日本リアリズム写真集団における「新しい写真運動」と「共同制作」の意味――写真集『長崎の証言』(1970)を中心に

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書誌事項

タイトル別名
  • The Significance of the “New Photography Movement” and “Collective Production” in the Japan Realist Photographers Association: A Focus on the Photobook <i>The Testimony of Nagasaki</i> (1970)

抄録

<p>本稿の目的は、日本リアリズム写真集団(以下、JRP)において「共同制作」が果たしていた役割とその意義を浮き彫りにし、同集団が掲げた「新しい写真運動」の具体的方向性を示すことである。そのために本稿では、JRP長崎支部制作の写真集『長崎の証言』(1970)を主な対象として考察を行う。</p><p>1950年代半ばから大学の写真部を中心に展開する共同制作は、プロ写真家の間、そしてJRPにおいても実践されていた。本稿ではJRPの共同制作の起源に、1950年代の集団「世界画報」による集団的写真撮影・制作があったことを指摘し、学生サークルとプロ写真家の共同制作の状況を俯瞰しながら、JRPの共同制作の特殊性を取り上げていく。</p><p>JRPの共同制作の多くは支部単位で行われており、その際各支部が属する地域社会の問題がテーマとされた。それゆえJRPの会員は、地域を共に生きる構成員の立場から、問題を抱える地域住民へ関わろうとする。このような「関与としての写真」のあり方が、JRP共同制作の独自性を示している。そして写真集『長崎の証言』にみられる、撮影者と被写体の相互関与から成り立つ「共同」制作のあり方は、従来の共同制作と一線を画すものにほかならない。このような共同制作の実践とあり方にこそ、JRPの「新しい写真運動」が見据えていた、社会の進歩と解放のためにカメラを役立てる道が開かれる可能性が志向されたのである。</p>

収録刊行物

  • 映像学

    映像学 111 (0), 72-94, 2024-02-25

    日本映像学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862545803707392
  • DOI
    10.18917/eizogaku.111.0_72
  • ISSN
    21896542
    02860279
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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