家事・育児への継続的関与を通して夫がジェンダー役割の囚われから脱却するプロセス:「主夫」の意識変容に着目して

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書誌事項

タイトル別名
  • Husbands Breaking Out of Captivity of Gender Roles through Continuous Involvement in Housework and Child-rearing: An Examination of the Consciousness Transformation of Househusbands

抄録

<p>本研究では,長期にわたる夫の家事・育児への継続的関与を通して,「主夫」である夫が,ジェンダー・ステレオタイプを克服し,ジェンダー役割の囚われから脱却するプロセスを明らかにすることを目的とした。3~20年にわたり主夫をする夫16名にインタビューを実施し,M-GTAにより分析した結果,夫と妻がジェンダー役割に囚われる要因として,それぞれの潜在意識,組織・学校・地域社会に内在する「無意識の思い込み」が大きな要因となっていることが明らかになった。加えて,夫が家事・育児への関与を深め,ジェンダー役割から脱却するためには,(1)夫と妻の間での情報の齟齬をなくし,情報共有の質と量を高めること,(2)夫が孤独な育児と苦悩を体験し,ジェンダーの囚われと葛藤する中で,社会に遍在する無意識の思い込みに自ら気づくこと,(3)地域社会との関係を試行錯誤し,主夫コミュニティなどを通じて,新たなソーシャルサポートを獲得すること,(4)ジェンダーに対する認知の「パラダイムシフト」が必要であることが推測された。さらに,夫の家事・育児に対する認知が,家庭内役割への継続的関与により「仕事」として価値転換され,それにより多様性の理解と柔軟な思考を促進させることが示唆された。</p><p>【インパクト】</p><p>夫の家事・育児への参加を促進する条件が整いつつあるにもかかわらず,なぜ日本では夫の家事・育児への関与が遅々として進展しないのか。この問いに対して,本研究の結果からは,夫と妻双方の「ジェンダーの囚われ」という解が見出された。従来の成人期男性の発達研究にはなかった視点から,仕事と家庭の狭間で葛藤する男性の心理に関する知見を得ることができた。</p>

収録刊行物

  • 発達心理学研究

    発達心理学研究 35 (1), 1-14, 2024-03-20

    一般社団法人 日本発達心理学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623768125952
  • DOI
    10.11201/jjdp.35.0027
  • ISSN
    21879346
    09159029
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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