肝移植の魅力と課題

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<p>将来は専門に偏らず、様々な急患手術にも対応ができるような外科医になりたい、そんな夢を胸に医学部に入学した私が、肝移植の分野に興味を持ったのはベッドサイド実習で見学した生体肝移植の手術がきっかけだった。しかし、実際に肝移植を志すきっかけとなったのは、医師4年目に担当した2人の肝移植を受けた患者さんとの出会いであった。生体肝移植はドナーとなる家族が、そして脳死肝移植も提供を決意してくれたドナーやその家族がいてこそ成り立つ医療である。そのため、患者本人だけでなく、その家族とも深く関わる機会も多く、患者の回復には家族の支えが不可欠であることを痛感する。だからこそ、死を目前にしていた患者が、笑顔で家族と退院した時の感動が、肝移植の一番の魅力ではないかと思う。ただ、医師の働き方改革が進められる中、肝移植の分野では医師の負担もまだ大きく、家庭を有する女性医師が両立できるような体制が整っているとは言えない。だが、女性医師の割合が増加している現在、女性医師を敬遠してしまう環境では、肝移植分野の継続した発展は難しいのではないかとも考えられる。移植医療は、移植コーディネーターを始めとした多数の職種が協力することが不可欠な分野でもあることから、多職種のチーム体制を確立させ、より分業化することが、将来的に医師の多様な働き方に対応できるような環境づくりの一歩となるのではないかと考える。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s218_1-s218_1, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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