腎移植後、ゲムシタビンによる薬剤性血栓性微小血管症をきたした1例

DOI
  • 蜂須賀 健
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 中島 龍一朗
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 春口 和樹
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 近藤 晃
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 川瀬 友則
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 三宮 彰仁
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 小山 一郎
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科
  • 中島 一朗
    板橋中央総合病院 臓器移植センター 移植外科

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抄録

<p>症例は74歳女性。61歳時にIgA腎症を原疾患とする慢性腎不全で血液透析導入となり、63歳時に夫をドナーとする生体腎移植を施行した。72歳時に食欲不振を契機とした精査で膵体部癌と診断された。腹腔動脈浸潤を認めたため切除不能の判断となりゲムシタビン・パクリタキセルによる化学療法が開始された。治療開始後5ヶ月頃より、クレアチニン上昇、尿蛋白の顕在化と浮腫を認めネフローゼ症候群の状態となり、患者の希望で抗癌剤治療は中断された。また同時に破砕赤血球を伴う溶血性貧血と血小板減少を認めており移植腎生検を施行したところ、慢性抗体関連型拒絶反応の所見とともに糸球体基底膜二重化や細動脈内や糸球体血管極に血栓形成があり薬剤性の血栓性微小血管症(TMA)を示唆する所見を認めたため、ゲムシタビンによる薬剤性TMAと診断した。患者は抗癌剤治療の再開は望まず、偏に血液透析導入を避けたいと強く願っており、腎機能の回復を優先する方針とし被疑薬であるゲムシタビンは中止のままとし、貧血・浮腫に対する治療を行なった。74歳時、診断から8ヶ月後に移植腎機能は維持された状態で癌死した。今回、抗癌剤であるゲムシタビンによる移植腎の薬剤性TMAを経験した。抗癌剤による腎障害では、腎障害そのものだけでなく有効な治療薬の減量・中止せざるを得ないことで生命予後を悪化させる可能性もあり、早期の診断と適切な治療が必要と考えられ、文献的考察を含めて報告する。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s264_2-s264_2, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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