腎提供後lost follow upとなった若年ドナーに認めた進行腎癌の1例

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抄録

<p>【症例】40歳代、女性。X-11年、他院で59歳の父親をレシピエントとしたドナー右腎採取術を施行。術後3年以降、lost follow upとなった。X年1月に人間ドックで左腎腫瘤を指摘され、前医にてCTで45mm大の左腎癌が疑われ、当科紹介。cT1bN0M0,stage1(RENAL score 11、PADUA score 10)の診断にて、腎部分切除の適応と判断。安定した腎冷却が可能な開放腎部分切除を選択した。X年4月、自家腎移植へも備えつつ、経腰的に冷阻血下左腎部分切除術を施行。腫瘍底部の切離の際、開放した静脈内に腫瘍浸潤を認めたが、肉眼的に断端陰性にて腎部分切除を完遂した(手術時間503分、冷阻血時間107分、出血量700ml;冷水込み)。術後はCr 5.7 mg/dlまで上昇するも透析を行うことなく、high gradeの合併症も認めず、術後22日目に退院となった。病理組織は、Clear cell RCC、G2、v1、広がり:腎洞脂肪組織[腎静脈・区域静脈]、切除断端:陰性、pT3aにて、病期はup gradeとなり転移再発リスクは高く、現在、厳重経過観察中である。【考察】若年ドナーは年齢的に医療機関を受診する機会が少なく、フォロー中断になる危険性が増すと予想される。加えて、単腎となることで進行した腎癌を認めた場合に腎機能温存と癌制御の両立が困難になり得る。また、10年以上の長期でみると腎不全に至るリスクも報告されており、ガイドライン上は若年でもドナーとなり得るが、その選定は慎重に行うべきである。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s265_3-s265_3, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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