再肝移植後に小腸穿孔を起因とした動脈性出血を繰り返し死亡した一例

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抄録

<p>再肝移植の成績は初回移植と比べて不良である.今回われわれは,再肝移植後に様々な合併症のため不幸な転機をたどった一例を経験したので報告する.症例は24歳,男性.生後3カ月に胆道閉鎖症に対して肝門部空腸吻合術,生後7か月に再吻合術,2歳時に生体肝移植を施行された.初回肝移植後の経過は良好であったが,22歳時に仕事の多忙および病識不足のため怠薬し,急性細胞性拒絶からグラフト不全に陥った.速やかに生体肝移植を予定したが,繰り返す胆管炎・腹膜炎などで延期せざるを得なかった.また,再肝移植直前には,門脈血栓性閉塞による急性増悪,IV度肝性脳症を来したため,血漿交換およびhigh flow HDFを施行した.その後,生体肝移植を施行した.腹腔内の癒着は極めて高度であり,複数の小腸損傷部の修復を要した.また,肝動脈は,脾動脈から大伏在静脈による間置グラフトを使用して再建した.手術時間は31時間24分であり,open abdomen 管理とした.術後は多数か所の小腸穿孔が生じ,そのため,第5, 7, 8, 10, 14, 16病日と繰り返す動脈性出血・出血性ショックをきたし再手術を行った.その結果,肝動脈が閉塞し,再吻合術・血栓溶解療法・ステント留置術などあらゆる血行再建を試みたが,最終的に再開通不可能な状態となった.第21病日にグラフト不全のため死亡した.病理解剖で,肝臓は広範な壊死に陥っていた.本症例の詳細およびこの経験から学んだことについて発表する.</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s279_1-s279_1, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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