理学療法士の帯同に伴う修学旅行参加による脊髄損傷児の日常生活活動の状況と心理面の変化

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p> <p> 当院では,約6年間,脊髄損傷児 (以下,SCI児)を治療している.新型コロナウイルスの国内感染防止策の緩和により,修学旅行 が企画された.修学旅行の効果は,ポジティブ感情, well-being等の精神状態を高めることが示されている (Uysal et al., 2016).理学療法士 (以下,PT)が帯同しSCI児が修学旅行へ参加した際の,日常生活活動 (以下,ADL)や,修学旅行前後の Well-beingの変化を調査した報告は少ない. 本研究の目的は,SCI児が修学旅行へ参加することによる, Well-beingの変化を調査し,PTが修学旅行に参加する意義を明らかにすることである. </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 本症例は,当院外来リハビリテーションに通う10歳代の女児である.幼児期に交通事故により第2胸椎脱臼骨折を受傷,SCIと診断された(Frankel分類:A, ASIA分類:A).修学旅行は,1泊2日でPT2名にて同行.複数回,小学校教員とミーティングを行い,導尿時間や班行動計画の情報を共有,身体機能に応じて修正した.身体評価として,Vital signs (血圧,脈拍,体温)を3時間毎の導尿時に評価した.さらに,Well-beingの評価として,The PERMA-profilerを修学旅行参加の1週間前後にて実施した.The PERMA-profilerとは,5つの領域から包括的に Well-beingを捉えることができる測度である(Butler J & Kern M, 2016).また,屋外ADLの状況をカメラで記録した. </p> <p>【結果および経過】</p> <p> Vital signs平均値は,収縮期血圧:102.8mmHg,拡張期血圧 61.8mmHg,脈拍:97.4bpm,体温:36.9℃で,修学旅行中に異常値は認めなかった.屋外ADLの課題として,導尿時間,急 勾配な坂・段差があげられた.The PERMA-profiler (Total score修学旅行前/後)は,ポジティブ感情 (15/12),関係性 (13/17),愛情心 (25/30),意味・意義 (0/4),達成 (20/16)で,ポジティブ感情および達成の下位尺度以外は点数が増加した. </p> <p>【考察】</p> <p> 修学旅行でPTが,班行動を把握し介助を行い,友人と同様のアミューズメントを利用させることができた.屋外ADLでは,特 に導尿時間が課題であがった.女性胸髄損傷者は開脚での導尿が必要であり,トイレ内環境により時間を有した可能性がある.胸髄損傷レベルの屋外の自己導尿獲得は,デバイス使用および患者の個人特性により可否は分かれることを報告している (仙 石ら,2006;Kriz J et al., 2014).ゆえに,移動時間やトイレ環境に応じて間欠式バルーンカテーテル等を検討する必要がある.Well-beingは,修学旅行後で加点する傾向を示したが,ポジティブ感情,達成項目で減点する結果となった.達成は,修学旅行後で得点が高まり肯定的な反応が促されると報告されているが (Miyakaw E & Kawakudo A, 2019),パフォーマンスの期待が大きい程,否定的な反応となることが示唆されている (Scanlan et al., 2005).今回の修学旅行では,想定より介助が多く,自身の信頼感の損失,受動的な行動により,否定的な感情反応が促されたことが要因と考えられた. 本症例報告より,障がいのある児が修学旅行へ参加することで Well-beingを高める可能性が示唆された.またPTが参画することで,有意義な活動を提供できる可能性がある. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p> 本研究は,明野中央病院倫理委員会の承認を得た.症例に本研究の目的,方法と参加する自由意志及び権利について,文書と口頭で説明を行ない書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 104-104, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770608768
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_104
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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