自閉スペクトラム症児における縄跳び動作の運動学的特性

DOI
  • 栗田 梨渚
    平谷こども発達クリニック 福井医療大学大学院 保健医療学研究科 保健医療学専攻
  • 藤田 和樹
    福井医療大学大学院 保健医療学研究科
  • 菅野 智也
    福井医療大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
  • 川端 香
    福井医療大学大学院 保健医療学研究科
  • 小林 康孝
    福井医療大学大学院 保健医療学研究科
  • 平谷 美智夫
    平谷こども発達クリニック

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)は、社会性・対人関係の障害や反復的な行動を主症状とする発達障害であるが、その多くに運動の苦手さが併存する。ASD児の基本的な運動技能については、姿勢制御の低下や両側協調性の障害が報告されており、上下肢の協調的な活動が要求される縄跳びの苦手さも指摘されている。縄跳びは学校体育の教材として取り入れられているが、ASD児の縄跳び動作の苦手要素に着目した報告は少ない。本研究ではASD児と定型発達(Typical Development:TD)児の前跳び動作を解析し、ASD児の縄跳び動作の特性を明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は7~9歳のASD児(7歳2名、8歳1名)とTD児(7歳2名、9歳1名)それぞれ3名。Bruininks-Oseretsky Test of Motor proficiency Second Edition Short Formにおける標準スコアは、 ASD児35-62(3例の範囲)、TD児56-72であった。三次元動作解 析装置には、VICON-NEXUS(赤外線カメラ8台、VICON社製)と床反力計(AMTI社製)を用いた。赤外線反射マーカーの貼付位置はPlug-in Gait Full Body Modelに準じて計39箇所に貼付した。対象者は水着を着用し、室内空間にて視線を固定したうえで前跳びを連続20回以上実施した。測定したマーカー座標データは Woltring Filter(10Hz)に通し、床反力データはlow-pass Butterworth filter(25Hz)に通した。次に、開始と終わりの各5 回を除いた連続する5回(1周期:足先接地~足先接地)を解析区間として加算平均した。動作時の身体中心(CoM)の変動係数(CV)および下肢関節の可動範囲とCVを算出し、ASD児とTD児で比較した。 </p> <p>【結果】</p> <p> CoMのCVについて、左右方向はASD児0.67-0.82、TD児 0.68-0.81、前後方向はASD児0.53-0.79、TD児0.45-1.21、垂 直方向はASD児0.04-0.20、TD児0.03-0.04であった。左股関節内外転のCVは、ASD児0.64-1.54、TD児0.31-1.23、右股関節はASD児0.42-1.92、TD児0.18-0.32であった。左膝関節屈伸の可動範囲はASD児27.7-78.1、TD児28.1-44.0、右膝関節はASD児52.8-66.9、TD児23.6-55.4であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> ASD児はTD児に比べて膝関節屈伸の可動範囲や股関節内外転 の変動が大きい傾向があった。ASD児は感覚入力の処理と調節が困難であり、同年代のTD児と比較して運動の感覚的側面に対する低反応や過反応を示す。そのため、ASD児は前跳び動作において下肢の動きが一定ではなく、膝関節屈曲角度を過剰に調節する可能性がある。その結果、縄を跳び越える際に膝が深屈曲すると考えられる。これは、ASD児における垂直方向CoMの変動の大きさにも関連している可能性がある。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、新田塚医療福祉センター倫理審査委員会の承認を得た(承認番号 新倫2022-30号)。ヘルシンキ宣言 に基づき、対象児とその保護者に対し、本研究の目的および方法、参加の撤回、フルライハリシー保護、成果の公表について、口頭 および書面にてインフォームドコンセントを得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 109-109, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770611200
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_109
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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