オンラインビデオ通話での運動介入により運動の苦手さがある児童の運動目標の達成された事例

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 令和4年の文部科学省の調査で、小・中学校の普通級に在籍する児童のうち8.8%が学習面又は行動面で著しい困難を抱えていることが示された。学習や行動面の障害のある児童の中には協調運動の課題が併存することが多いことも指摘されており、運動の困難さにより日常生活や学校での活動への参加に支障をきたすことから運動面の支援の必要性が示唆される。また、昨今は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、オンライン等での支援のニーズを聞く機会が増えてきている。今回、オンラインビデオ通話を使った運動への介入により、児童が設定した目標を達成する事例が得られたので報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 対象は普通級へ通学中の6歳女児。現在診断はついていないが親御様より「落ち着きがなく、習い事で座っていられない」「運動全般があまり得意ではない」「友達よりできなくて泣いてしまった」などが挙げられていた。初回面談日 (X日)より6か月の間、月2回オンラインで理学療法士が介入を行った。介入は母親とカナダ作業遂行測定 (以下COPM)を用いて設定した目標 に沿って、オンラインかつ自宅内で取り組めるメニューの実施、ホームプログラムの提案を行った。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> X日に行った面談時に母親と「①縄跳びを10回」「②跳び箱を 3段」「③自転車を補助輪なし乗る」を目標として設定した。それぞれの遂行度、満足度は①が2、5、②が6、7、③が1、1で平均遂行度3.0、平均満足度4.3であった。縄跳びは一回のみで連続飛びが難しい、跳び箱は3段を大人のサポートがで跳べることもある、自転車はサドルを跨ぐことはできるがも漕ぐことが難しい状況であった。X+6か月の介入後に行った面談時にはそれぞれの遂行度、満足度は①9、9②10、10、③10、10で 平均遂行度9.7、平均満足度9.7に向上した。縄跳びは連続40回、跳び箱は4段、自転車は自立で漕ぐことができた。また、本児 より「高い段の跳び箱を飛びたい」「あや飛びをやりたい」などの次の目標を要望する様子も見られるようになった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本症例ではオンラインビデオ通話での理学療法士による運動の介入により、設定した目標のCOPMの向上が見られ、本児から次の目標を要望するなど運動に対して前向きになる様子が見られた。介入は縄跳びから開始された。縄跳びは上肢の回旋運動や跳躍、縄に合わせた協調運動が必要と言われている。本症例は初めにタオル等を用いた協調的な動作練習など縄跳びに必要な動作の要素を分解し、少しずつ成功体験を積むための介入を行った。その結果、苦手な運動への参加機会が増え、縄跳びの COPM向上に繋がったと考える。また、本児からの運動へ意欲的な発言や週3回以上のホームプログラム実施など習慣的に運動をする機会が増え、一つの目標の成功体験が運動に対しての意欲向上や習慣化したことで他のCOPMの向上に繋がったと考える。オンラインビデオ通話を用いた運動介入は、児童ごとにあった運動の機会を提供することで成功体験を積め、日常生活での運動機会を増やし、困難な運動の改善に繋がることが示唆される。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告は当社の規定に基づき、個人を特定できないよう配慮し、研究以外の目的で患者データを利用しないこととした。また、症例の家族に対して本報告の趣旨を伝え、ウェブ上のフォームにて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 113-113, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770613632
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_113
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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