生体電気インピーダンス法を用いた脳性麻痺児の筋量計測の検証

DOI
  • 仲村 真哉
    秋田県立医療療育センター リハビリテーション部 秋田大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 理学療法学講座
  • 木元 稔
    秋田県立医療療育センター リハビリテーション部 秋田大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 理学療法学講座
  • 川野辺 有紀
    秋田県立医療療育センター リハビリテーション部
  • 三澤 晶子
    秋田県立医療療育センター 診療部
  • 坂本 仁
    秋田県立医療療育センター 診療部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 脳性麻痺 (cerebral palsy ; CP) 児は同年齢の典型発達 (typically developing;TD)児よりも筋量が減少しているとされ る。筋量の減少は筋力に加え、粗大運動能力とも関連するため、重要な評価指標の一つである。 筋量の計測には、得られた値に体格が影響することを考慮する必要がある。特にCP児は同年齢のTD児と体格が異なるため、筋量の値の解釈に注意を要する。筋量計測に使用される生体電気インピーダンス法は、骨格筋指数 (skeletal muscle mass index;SMI)と細胞外水分比 (extracellular water / total body water;ECW/TBW)を計測でき、これらは体格差の影響を軽減して筋量の指標となるとされている。粗大運動能力が低いCP児はTD児よりも、さらにCP児内でも粗大運動能力が低い症例で は、SMIが低く、ECW/TBWが高くなる可能性がある。しかし、 CP児とTD児のSMI、ECW/TBWの比較検証は未だなされていな い。 本研究の目的は、CP児の筋量と体格に関連があるか、また体格の影響が小さい筋量の指標であるSMIとECW/TBWはCP児の筋量が減少していることを示すかを明らかにすることとした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 被験者は35名 (CP児19名、TD児16名)とし、粗大運動能力で3つのサブグループに分け、軽度CP群 (粗大運動能力分類システム (gross motor function classification system ; GMFCS)level I-II)、重度CP群 (GMFCS Ievel III-V)、TD群とした。InBody S10を使用し、体格指数 (body mass index;BMI)、筋量、SMI、 ECW/TBWを求めた。統計解析は、CP児の体格と筋量の相関関 係を分析するためにPearsonの積率相関係数を算出した。3つのサブグループの比較を実施するために、多重比較法 (Bonferroni法)を用いた。有意水準は5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> CP児のBMIと筋量に有意な相関関係が存在した (r= 0.72、 p< 0.001)。 SMIは、軽度CP群 (4.8 kg/m2)と重度CP群 (3.2 kg/m2)はTD児 (6.1 kg/m2)よりも有意に減少した (軽度CP;p= 0.030、重度 CP;p< 0.001)。さらに重度CP群は軽度CP群よりも有意に減少した (p= 0.009)。 ECW/TBWは、軽度CP群 (38.6%)と重度CP群 (39.9%)はTD児 (38.0%)よりも有意に増加した (軽度CP;p= 0.042、重度CP;p < 0.001)。加えて重度CP群は軽度CP群よりも有意に増加した (p < 0.001)。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本研究においてCP児はBMIと筋量に有意な正の相関関係があった。これは体格が異なる個人間では筋量を単純に比較することが難しいことを示す。 一方、CP児のSMIは健常児よりも有意に低値であり、逆に ECW/TBWは有意に高値であった。さらに粗大運動能力で比較 すると、重度CP児は軽度CP児よりもSMIが有意に低値であり、 ECW/TBWは有意に高値を示した。SMIとECW/TBWは体格の 影響を受けにくくSMIが低値、ECW/TBWが高値を示すと筋量の減少が生じているとされている。そのため、CP児はTD児よりも筋量が減少し、CP児内においても粗大運動能力が低いほど筋量が減少している可能性が示唆された。 本研究の知見は、CP児とTD児の筋量を比較する際に単純な筋量のみを比較するのではなく、SMIやECW/TBW等の指標も比較する必要性を示すものである。これら指標を改善する方法は今後の検討が必要である。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき、所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:2023-3)。研究開始前に対象者とその保護者に口頭及び文書で研究の説明を行い、文書で同意を得た上で実施した。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 118-118, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770615808
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_118
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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