同時入園し目標指向型集中リハビリテーションを実施した学齢期の2症例~HABIT-ILEの報告~

DOI
  • 小川 智美
    千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション治療部 小児療法室 第2理学療法科
  • 大矢 祥平
    千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション治療部 小児療法室 第1理学療法科
  • 川原 佑亮
    千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション治療部 小児療法室 作業療法科
  • 田邉 良
    千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 海外では脳性麻痺片麻痺児の上肢を対象とした運動学習に基づく目標指向型集中トレーニングHand Arm Bimanual Intensive Therapy(以下HABIT)の介入報告があり、高いエビデンスも報告されている。またHABITに姿勢制御と下肢体幹活動を含めた HABIT Including Lower Extremity (以下HABIT-ILE)の介入では、集団かつキャンプ形式で実施した場合、通常の理学療法より下 肢体幹機能の向上を認めるという報告があるが本邦での報告は 少ない。今回当センターに複数で入園してHABIT-ILEを実施し、機能改善や自身の身体の気づきに繋がった2症例を経験したの で報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例1は脳性麻痺痙直型右片麻痺を呈する12歳男児 (GMFCSⅠ MACSⅡ)。介入前後にBox and Block Test (以下BBT)、簡易上肢機能検査(以下STEF)、GMFM-66、ABILOKO-Kidsを評価した。目標はカナダ作業遂行測定(以下COPM)を用いて聴取し、袖のボタンを留められる、靴下・靴の時に右手を使って履く等挙げられた。 症例2は海綿状血管腫術後左不全麻痺を呈する12歳男児。介入前後にFugl Meyer Assessment (以下FMA)、BBT、STEF、片脚立位時間を評価した。目標はCOPMを用いて聴取し、Proコントローラーの操作が上手になる、お椀によそうことが上手になる等挙げられた。 介入前評価後、同期間同部屋で入園しHABIT-ILEを実施した。入園期間は11日、PTOT介入は1時間ずつ9日間、PTでは麻痺側を積極的に使用する全身運動を行った。また毎日2~3時間の自主トレはCOPMに合わせた課題指向練習で10個程用意し必要な道具を自室管理とした。課題は本人が選び、実施した課題内容等を、トランスファーパッケージを用いて本人たちに記録させ、PT時間内に行った内容の振り返りを行った。介入後評価は退園1週間以内に行った。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 両者のPTOTと自主トレの合計時間は43時間だった。症例1は BBTが28から37、STEFが58から71となった。GMFM-66は歩行項目で76から78.3、COPMは遂行スコアが4.7から8.6、満足スコアが5.4から8.7となった。症例2はBBTが27から31、 STEFが49から52、FMAの下肢は35から37となった。片脚立位は右が46秒から1分以上へ、左が10秒から12秒、COPMは遂行スコアが2.1から8.8、満足スコアが2.4から9.1となった。 PTでは、2人がやりたい運動を本人たちの機能に合わせて難易度を調整し、達成感を得られる活動を心がけた。PT終了時は常に「楽しかった」という発言があった。麻痺側上肢のADL上の使用の記録では、開始時は2.3個の記録が、3日目以降は10個以上記録されており、ADL内で麻痺側上肢の参加の気づきが増加していた。 </p> <p>【考察】</p> <p> 症例1はGMFM-66の歩行項目で改善が見られ、症例2は片脚立位時間が延長した。これらはキャンプ型HABTI-ILEは下肢体幹機能向上するという海外の報告(Yannick2015)と一致している。また、学齢期の児たちが目標を決め、一緒に自主トレやPTに取り組むことで切磋琢磨し、時には内観することで自己の気づきを促すことも出来たと考える。思春期を迎える学齢期児に対する入園でのHABIT-ILEは、身体機能だけでなく、情緒面にも好影響があると考えられる。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>症例報告について当センター倫理委員会の承認を得た (承認番号:医療5-7)。またヘルシンキ宣言に基づき倫 理的配慮等について本人、ご家族に説明し書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 126-126, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770620288
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_126
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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