成人期脳性麻痺の問題点:運動量、活動量低下による体重増加や身体機能の低下に対しての取り組み

DOI
  • 間地 伸吾
    1) 社会医療法人 北斗 十勝リハビリテーションセンターリハビリテーション部
  • 江川 奈美
    1) 社会医療法人 北斗 十勝リハビリテーションセンターリハビリテーション部
  • 安倍 千秋
    1) 社会医療法人 北斗 十勝リハビリテーションセンターリハビリテーション部
  • 白坂 智英
    2) 社会医療法人 北斗 十勝リハビリテーションセンター診療部

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 成人期脳性麻痺の問題点として,就学時と比較すると,日々の活 動量,リハビリの頻度減少,個々のコンディショニング管理能力 (家族、周囲の協力、関心なども含む)などの環境・個人因子が,身体機能,日常生活活動 (activities of daily living;以下,ADL)の低下に結びついている可能性がある. 今回,学校卒業後,運動量や活動量が減少したことから,身体機能の低下や体重増加による ,ADL介助量が増加傾向にあった成人脳性麻痺患者を外来リハビリで担当した.そこで,身体機能,ADLの向上を目的に栄養指導,体重管理,筋力増強運動を中心とした自主トレーニングを14週間実施したため経過とあわせて報告する. </p> <p>【症例情報】</p> <p> 一般情報:20歳代,男性,身長164.5cm,体重85.5㎏,BMI32.6.診断名:痙直性両麻痺(GMFCSレベルⅢ) 個人的・社会的背景:高校生活は,高等養護学校での寮生活を送っていた.卒業後は,地元の企業に事務職として就職し,両親と同居.高校卒業時は体重68㎏→現在85.5㎏と約17㎏の増加.高校時代に比べて,運動機会は減少傾向.卒業前まで車椅子と併用してロフストランド杖での移動が可能であったが,現在は電動車椅子主体の生活となっている. HOPE:動きやすい身体になりたい. </p> <p>【介入方法】</p> <p> 体重増加と身体機能の低下に着目し,自主トレーニングの指導 (筋力増強運動を中心に),栄養指導(体重管理,食事内容の記載,管理栄養士からの栄養面でのアドバイス)を14週間実施した. </p> <p>【結果】</p> <p> 開始時→14週後の結果を記載.体重:85.5㎏(BMI32.6)→75.7㎏ (BMI28.9),握力(右/左)21.4kg/20.1kg→24.5kg/21.3kg,身体 10m歩行テスト:21.3秒(20歩)→15.3秒(15歩),6分間歩行テスト:開始時は3分地点でリタイア→195m,TUG:59.9秒→43.1秒 ,FIM:110点→111点(社会的交流の項目で加点,加点には至らなかったが更衣,トイレ動作,移動面での円滑性,動作のやりやすさが聞かれた). </p> <p>【経過】</p> <p>(体重と日常生活の変化) 開始時(85.5kg):毎食時の飲料をミルクテイーから無糖飲料に変更.自主トレーニング開始.4週目(80.5kg):朝食を開始,公営プールでの歩行練習開始.8週目(80.3kg):30分早く起床するようになった (7:45→7:15).10週目(78.9kg):便秘症の緩和.13週目 (75.7kg):パラスポーツ,ファッションショーなどのイベントに参加するようになった. </p> <p>【考察】</p> <p> 今回の結果として,体重の減量,身体機能の向上に加え,生活面における行動変容も見られた.特に,FIMの評価に著変な変化はみられなかったが,体重,身体機能の変化,ADLの動作の質や円滑性が向上したことで,運動や活動に対しての自信が生まれ,パラススポーツやファッションショーの参加などQOLにも繋がったと考える.成人期は脳性麻痺患者に限らず健常者も含めて,個々のコンディショニング管理能力が体重増加や身体機能,ADLの低下に結びついていると考えられる.外来リハビリでの直接的な介入と併せて,食事や運動習慣などの生活指導も理学療法士には求められていると考える. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本発表にあたり、個人情報とプライバシーの保護に配慮し、症例より同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 139-139, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770625536
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_139
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ