General Movements可聴化の試み

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 新生児や乳児が示す多様な自発運動のなかで最も頻繁に出現す るGeneral Movements (GMs)は,脳の自発活動が生み出す運 動であり,ヒトの初期発達過程に重要な役割を担っている.特に GMsの一種であるFidgety Movements (FMs)の質的特性は,後の神経学的発達を予測するマーカーとして注目されている.近年,身体運動学や運動制御研究の分野では,身体情報の可聴化によるフィードバックが身体感覚への気づきを促し,運動学習を促進する手段として有用であるとされている.本研究では, 3次元動作解析装置で計測した乳児の四肢自発運動データに身体運動可聴化技術を適用し,GMsの特性を反映した音を作成する.GMsの可聴化は,全身性自発運動の質的特性を観察評価する際の補足情報や,児のGMsを促進するための聴覚フィードバック音源として利用できる可能性がある. </p> <p>【方法】</p> <p> 2 ~3ヵ月齢児を対象に四肢の自発運動を3次元動作解析装置で計測したデータセットから,GMs観察評価による印象が異なる 3ケース (①FMsがよく出現している (continual),②FMsが時折出現している (intermittent),③FMsの出現がほとんどない (sporadic))を選定し,その四肢運動座標データを可聴化に用いた.可聴化にはデジタルオーディオワークステーションソフトウェア (Ableton Live 11 Suite)とその内部で動作する開発環境ソフトウェア (Max for Live)を使用し,四肢座標データから算出した加速度と曲率値を音響パラメタに関連付けて音として表現した.四肢それぞれに個別のInstrument (楽器)を割り当て,座標データから算出した加速度の増減に対して音量が上下する持続音に変換した.また,座標データから曲率の値を算出し,その値が一定の閾値を超えた時に鈴の音を付加した.鈴音には四肢で共通したInstrumentを用いたが,エフェクトによって音高を変化させるよう工夫した. </p> <p>【結果】</p> <p> 四肢運動の加速度データを音量に反映させ,四肢それぞれに異なるInstrumentを割り当てたことによって,広がりのある音が生成された.また,音が持続するエフェクトを付加したことにより,急に音が鳴ったり途切れたりすることのない柔らかい背景音となった.曲率値を反映した鈴の音は四肢末梢の微細な運動特性を表しており,四肢全体の粗大運動が作る背景音の中に聞き取りやすいアクセントとなった.また,FMsの出現頻度が高い (continual)ケースでは,他の2ケース (intermittent, sporadic)に比べて鈴の音が多く聴取された. </p> <p>【考察】</p> <p> FMsが出現するとされる生後2~3ヵ月頃の四肢自発運動は,粗大な運動と微細な運動が同時に現れる特徴を有している.今回作成した音は,それらを反映し,運動特性を聞き取りやすく可聴化できたと考える.観察評価によってFMsがよく出現していると判定された児のデータでは,四肢末梢の微細な運動特性を表す鈴の音がよく聴取され,「四肢が速度を変化させながら,あらゆる方向で円を描くような運動」と定義されるFMsの特性を反映した音になっていると考えられた.作成された音や,そのスペクトログラムなどは,FMsの観察評価をする上で評価者にとって有用な補足情報になる可能性がある. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は東京大学ライフサイエンス委員会 (承 認番号:13-35)の承認を得て行った.対象者と代諾者には口頭と書面を用いて研究の概要を説明し,同意を得た上で実施した.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 142-142, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770627456
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_142
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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