小児難治性てんかんに対する機能的大脳半球離断術後の理学療法経験

DOI
  • 松永 彩香
    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部
  • 加藤 太郎
    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部
  • 山野 真弓
    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部
  • 上村 亜希子
    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部
  • 宮崎 裕大
    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部
  • 原 貴敏
    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小児難治性てんかんに対する半球離断術等の外科的手術は、てんかん発作が軽減する一方で術後に片麻痺後遺症が残存することがある。しかし、術後の身体機能や片麻痺後遺症の経過や、理学療法に関する報告は少ない。今回、ラスムッセン脳炎による難治性てんかん患児の機能的大脳半球離断術 (以下半球離断術)後の理学療法経験を得たので、片麻痺後遺症の経過とともに報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 症例は5歳1か月女児。3歳9か月で胃腸炎、3歳10か月で右上 肢のつっぱりとガクガクとした動きがみられた。その後、数回同様のエピソードあり、他院受診し精査加療するも改善せず当院紹介受診。4歳9か月でラスムッセン脳炎と診断され、左半球離断術施行。術後17日に自宅退院し、術後3か月に術後評価目的で入院された。 </p> <p>【結果】</p> <p> 術前は、Brunnstrom recovery stage (以下BRS)右上肢Ⅴ手指 Ⅴ下肢ⅥではあるがADLは年齢相応で、Modified Ashworth Scale (以下MAS)右下肢1+、Pediatric Evaluation of Disability Inventory(以下PEDI) (機能的スキル/介助者による援助)ではセルフケア58/26点、移動58/35点、社会的機能52/19点であった。術後2日目から理学療法再開し、BRS右上肢Ⅰ手指Ⅰ下肢Ⅰ、MAS右足関節2でADL全介助レベルであった。その後は発熱や嘔吐あり介入困難となった。術後7日目になると少しずつ活気が戻り、介助下で胡坐坐位が可能となる。術後8日目では介助立位まで実施するも右下肢の支持性は乏しかった。術後9日目でBRS右上肢Ⅰ手指Ⅰ下肢Ⅱ、MAS右膝1足2となり歩行練習開始したが、膝折れあり数歩で終了した。一方でバギー離床を開始した。術後10日目で短下肢装具を装着して歩行練習を開始した。術後14日目で起居が可能となり、装具なしでの歩行練習を5~6m実施した。術後15日目でBRS右下肢Ⅲとなり、歩行も後方介助で60~70m程度可能となった。座位が安定したため、バギーから普通型車椅子に変更し、術後17日で自宅退院された。術後3か月では、BRS右上肢Ⅳ手指Ⅲ下肢Ⅲ、MAS右上肢1手指1足関節2、PEDIはセルフケア70/33点、移動59 /35点、社会的機能51/16点であった。右不全麻痺は残存しており、歩行は右尖足、走行はスキップであった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 術後は、一時的に右弛緩性麻痺が生じ、その後痙性麻痺へ至った。装具療法を取り入れたが、本人の嫌がりや早期退院により継続できなかった。乳幼児期の半球離断術においては、脳の可塑性により健側半球の代償で機能回復が見込まれる場合があるが、術後3ヶ月後評価では退院時の麻痺の改善を認められず、 PEDI点数は一部改善したが代償動作が定着した。半球離断術後の自立歩行獲得において装具療法の重要性を説明した文献もあり、術後の装具療法について積極的に導入するべきだったかもしれない。そのためには、術前から保護者に対する装具療法の重要性の説明や患児が装具に慣れる練習が必要だと感じた。また、退院後は他院でリハビリテーション治療の継続を予定していたが、実施していなかった。そのため、退院後のフォローアップの重要性を感じた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>対象者および保護者に研究目的と内容を口頭で説明し、同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 157-157, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770634752
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_157
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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