当センターにおける先天性心疾患患者に対する心臓リハビリテーション導入の試み—成人一症例の経過報告—

DOI
  • 陽川 沙季
    大阪母子医療センター リハ・育療支援部門
  • 山西 新
    大阪母子医療センター リハ・育療支援部門
  • 﨑田 博之
    大阪母子医療センター リハ・育療支援部門
  • 脇田 媛加
    大阪母子医療センター リハ・育療支援部門
  • 中村 達志
    大阪母子医療センター リハ・育療支援部門
  • 田村 太資
    大阪母子医療センター リハビリテーション科

Abstract

<p>【はじめに、目的】</p> <p>先天性心疾患(CHD)患者に対するリハビリテーション(リハ)報告は近年増加している。多くは術後早期の症例であり、退院後フォローを継続したものは少なく、成人 CHD患者の心臓リハ(心リハ)報告はほとんどない。当センターでは2022年12月より心肺運動負荷試験(CPX)が可能な小学校高学年以上の先天性及び後天性心疾患慢性病態の患者で、主治医が選択し本人や両親が希望した症例を対象に、心リハ入院及び外来での定期的な運動機能評価、理学療法介入を個別に行う取り組みを開始した。今回、その対象となった一症例の経過を報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p>症例は25歳女性である。作業所に週5日勤務している。現病歴は生後12日に心室中隔欠損症、大動脈狭窄に対して根治術を施行、大動脈弁狭窄の進行あり4歳でバルーン大動脈弁形成術、10歳で大動脈弁輪・弁下拡大、人工弁置換術を施行された。また8歳に右片側肥大症の脚長差に対し 40mmの左下腿延長術を施行された。今回、心不全の急性増悪で入院したが内科治療で心不全症状が軽減し、その入院中から心リハ導入目的での理学療法が開始となった。開始時、身長 139.4cm、体重53.0kg、BMI27.3kg/m2、BNP139.6pg/mL、心胸郭比56.5%、6分間歩行距離(6MD)は335mであり、胸部疲労よりも下肢疲労が優位であった。適切な負荷量での運動習慣を身に着けることと減量を目標とし、2日目にCPX(トレッドミルRamp負荷)を実施し、AT値を参考にしたエルゴメータでの 有酸素運動やレジスタンストレーニング(RT)を開始した。退院後も継続できる内容で、スマートウォッチの心拍数やBorg scaleを用いた回数やインターバル調節も指導した。また、回 数等を記載できるチェック表を作成した。42~60日目に心リハ及びカテーテル検査目的の入院をはさみ、その後は外来診察に合わせて月1~2回の理学療法を継続している。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p>外来リハ時はエルゴメータでの有酸素運動 を継続し、ストレッチやRTはフォームや疲労等正しく行えているかを確認した。外来診察でも内服調整があったため心拍数は参 考値とし、自覚症状やペダル回転数等で負荷量を調整した。また、ホームエクササイズはそれまでの生活や遂行度を聴取し、必要で あれば適宜内容も修正した。開始5ヶ月時点で、6MD は400mに向上した。ホームエクササイズは継続できており、作業所からの帰りを歩く、母の買い物や犬の散歩についていくなどの行動変容も起きたが、体重は53.2kgと減量には至っていない。 </p> <p>【考察】</p> <p>成人CHD患者に対し、入院と外来での心リハを導入した。介入後約5ヶ月時点で、運動耐容能の向上を認めた。心不全急性増悪後で内服調整をしている例であったが、CPXを実施し定期診察に合わせて個別的な評価や介入を継続することで、モチベーションを保ちながら有害事象なく運動習慣をつけることができている。しかしながら、減量の効果は5ヶ月時点では見られていない。カロリー制限が難しく、もともと運動習慣のない下肢手術既往のある患者であり、今後運動療法の継続による筋量の増加の可能性も示唆されるため、体重の推移には注意しつつ、長期的なフォローが重要と考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>ヘルシンキ宣言に基づき、患者と保護者に発表の主旨を説明し同意を得た。 </p>

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