痙攣重積型急性脳症を呈した児に対しGMFM及びCOPMを用いた症例

DOI
  • 仲山 玖未
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 理学療法科
  • 川瀬 麻理
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 理学療法科
  • 浅井 朋美
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 理学療法科
  • 田辺 仁彦
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 小児科

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 急性脳症児の理学療法に関する臨床研究はほとんど見られず運動機能評価も確立されていない.粗大運動能力尺度(以下, GMFM)は脳性麻痺に対する粗大運動機能評価であるが,脳外傷の評価としても使用されており,同じ後天性脳障害である急性脳症にも使用できると考えた.また,家族との協働や生活に基づいた目標設定のため,カナダ作業遂行測定(以下,COPM)を使用した.今回,痙攣重積型急性脳症を呈した児に GMFM・ COPMを使用し目標設定・理学療法介入を行ったため報告する. </p> <p>【症例報告】</p> <p> 本症例は痙攣重積型急性脳症を呈した2歳4か月の男児である.発症前の運動発達に問題はなかった.発症後3か月で当院に母子入院し3か月間の介入を行った. 入院時より定頸しており左側への寝返りは自立していた.胡座位では上肢の支持は見られず,頭部と体幹は伸展し,後方へ傾倒していた.骨盤を介助すると頭部と体幹は前傾位で動揺するが胡座位を保持することは可能であった.端座位は体幹が前後に動揺するため胸部での支持が必要であった.音の鳴る物やボールには興味を示したがリーチングは見られなかった.GMFMは領域A:54.9%,領域B:8.3%,領域C-E:0%であった. 入院当初,母から「元のように走ってほしい」という希望があったがGMFMの結果を元に現状の運動機能を説明し, COPM(遂行度/満足度)評価時には,①普段の座位の安定(2/3), ②バギー座位の安定(7/8),③食事を落ち着いて食べる(2/2)と聴取できた.そこで,3つの目標の共通要素である座位保持獲得を目標とした. </p> <p>【結果及び経過】</p> <p> GMFMの項目である座位での前方や後方45°の玩具を触る課題は減点があった.そこで,骨盤介助をしたリーチング動作を通して胡坐座位での体幹保持練習を行い,介助量を徐々に減らした.玩具の配置は前方から開始し,体幹の回旋を促すために 徐々に後方へ設定した.また,上下肢支持なしでの端座位保持の項目は困難であったため,まずは,足底接地や机上で上肢を支持した姿勢での遊びを行った.動画撮影を行い,母に介助方法を説明した. 退院時,左右の寝返りや端座位が自立し,介助なし胡座位では玩具操作が可能になった.GMFMは領域A:86.3%,領域B:51.7 %,領域C:2.4%,領域D-E:0%に向上した.COPM(遂行度/満足度)は①(10/10),②(10/10),③(6/8)であった.母からは 「遊びや食事の介助がやりやすくなった」と聴取できた. </p> <p>【考察】</p> <p> 後天性脳障害は家族が発症以前の運動機能への回復を期待するため現状と乖離を感じることがあり,家族・セラピスト間でリハビリの方向性に差異が生じる可能性がある.しかし,本症例ではGMFMを使用したことで母への児の運動機能の説明することができ,さらに,介入時に課題・難易度の設定を行う際の一助にもなった. また,GMFMに加えCOPMを用いたことで,現状の運動機能と日常生活動作から目標設定を行い母と共有することができた.これらが目標達成を目指した介入や円滑な家族への指導につながったと考える. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>発表に際してヘルシンキ宣言に基づき,ご家族へ書面にて十分な説明を行い,同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 168-168, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770642560
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_168
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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