肢体不自由特別支援学校とリハビリテーションセンター双方向の児童生徒の情報提供とその有用性の検証

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 肢体不自由特別支援学校 (以下,支援学校)ではリハ職を活用する動きがあるがその連携は十分に進んでいない。特に外来リハの範囲内で連携を図る場合,時間的な制約から教員と定期的に話し合いの場を持つことは難しい。支援学校と医療機関との間に児童生徒 (以下,児)の成長につながる効率的で効果的な連携方法の構築が求められている。本研究は支援学校と当院との間で児の目標・課題・取り組みについての情報を相互に提供し,その有用性について検証した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は当院外来PTを利用する支援学校の在籍児34名の教員24名とPT3名である。調査期間は2022年2月から1年とした。PTから評価の要約,カナダ作業遂行測定 (COPM)による目標,プログラムを記載した「PT目標シート」を,教員から「個別の教育支援計画・個別の指導計画」 (以下,支援・指導計画)を相互に提供した。提供後, PT及び教員から記名式質問紙を用いて児34名分のアンケート調査を行った。得た結果を,児の所属,横地分類,目標の分類,COPMの変化量で項目分けし,各項目に対し「PT目標シート」及び「支援・指導計画」の有用性を4件法にて,共同意思決定 (SDM)について2件法にて調査した。 SDMについてのアンケートは,「日本語版SDM-Q-Doc」を参考に作成した (以下,SDMQ)。SDMQについてPTと教員間でカイ二乗検定にて検討した。COPMの変化量についてウィルコクソンの符号順位検定にて検討した。統計処理にはEZR(v1.61)を使用した。 </p> <p>【結果】</p> <p> アンケートの回収率は「目標シート」79%,「支援・指導計画 」100%, SDMQはPT100%,教員68%だった。児の所属は,小学部62%,中学部23%,高等部15%だった。横地分類は重症者55%だった。目標の分類は,心身機能のこと56%,家庭のこと41%,学校のこと3%だった。COPMは,低下もしくは変化なしが29%,1点向上が24%,2点以上向上が48%となり,遂行度,満足度ともに有意な改善がみられた (<0.05)。「PT目標シート」及び「支援・指導計画」についてほとんどが「有用である,今後も活用していきたい」との回答だった。SDMQは 「方法についての比較検討」でPTより教員で有意に高かった。教員は全質問で「当てはまる」が高かったがPTは「選択肢を伝えること」と「方法についての比較検討」で低かった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 結果から「PT目標シート」及び「支援・指導計画」の有用性が確認された。COPMは作業遂行に対し,本人及び保護者が内容 の決定や成果の評価に積極的に参加することができる,とされている。今回,COPMを評価する過程でSDMが行われ,効果的な 取り組みが実践されたことで有意な改善が得られたと考えられる。今回の対象に重症者が多くPTでは心身機能の維持を目標として 継続的に取り組んでいたためSDMQの「新たな選択肢を提示」 や「方法についての比較検討」で低かったと考えられる。目標の分類は,学校のことがほとんどなかった。学校の取り組みにPTを活用すれば,学校での目標達成の可能性は高まり,家庭への波及効果が示唆される。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究の説明と協力依頼を学校長に行った。また各担任教員には本研究の説明文書,質問紙調査への協力依頼の文書,質問紙を返信用封筒とともに同封し保護者を通じて渡した。説明文書には,質問紙調査への回答・返答をもって研究への参加に同意が得られたものとすること,また,学術的公表を予定していることも明記した。ヘルシンキ宣言に基づき,児童生徒本人及び保護者には口頭で十分に説明を行い,書面にて研究参加の同意を得た。なお,本研究は,福島県立医科大学倫理委員会の承認を得ている (2022-038)。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 30-30, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770649088
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_30
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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