3~12歳児における歩行中の関節運動パターンの発達

DOI
  • 宮城島 沙織
    札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部
  • 萬井 太規
    大分大学 福祉健康科学部理学療法コース
  • 佐藤 優衣
    札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部 札幌医科大学大学院 保健医療学研究科
  • 広崎 蒼大
    札幌医科大学大学院 保健医療学研究科
  • 小塚 直樹
    札幌医科大学大学院 保健医療学研究科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p> <p> 運動の発達や成熟を評価する上で歩行能力の定型的な発達過程を理解することは重要である.自然に近い小児の歩行を評価するためには,AI技術を用いたマーカーレスモーションキャプチャやビデオによる歩行分析が臨床において採用しやすい.しかし,歩行分析の際に指標になるような幼児期からのデータは我が国では報告されていないのが現状である.本研究の目的は, 3~12歳児における歩行中の関節運動パターンの発達を明らかにすることとした. </p> <p>【方法】</p> <p> 3~12歳の定型発達児92名を対象とした.対象は3-4歳25名, 5-6歳28名,7-8歳20名,9歳以上19名の4群に割り当てた.対象者は,裸足にて6mの直線歩行路を快適速度で歩行するよ うに指示された.27個の反射マーカーを貼付し,三次元動作解析システムおよび床反力計にて,歩行中の運動学的データを記録した.解析範囲は,中間の4mの内,最初の踵接地から1歩行周期とした.矢状面における股・膝・足関節の関節運動の時系列データを算出した.統計解析は,多変量分散分析を用い,支持脚と遊脚相それぞれの各最大屈曲および伸展関角度,踵接地時の足関節角度を各年齢群で比較した.危険率は5%とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 踵接地時の足関節角度は各群間に有意な主効果が認められた (p = 0.03).多重比較の結果,3-4歳群が7-8歳群より有意に大きかった (p = 0.04).支持脚と遊脚相それぞれの各関節の最大屈曲および伸展関角度において,年齢間に有意な主効果は認められなかった.関節運動パターンは,足関節にて,3-4歳群 ではほぼ全例で足関節は0度からやや背屈位で接地し,その後の底屈運動が見られない.5-6歳群で接地後の底屈運動を認めるようになるが,個人差が大きかった.足関節運動は,9-12歳群でほぼ成人と同様のパターンとなった. </p> <p>【考察】</p> <p> 3~ 12歳児における歩行中の股・膝関節運動は各年齢群で同様のパターンを示すことが明らかとなった.これらは既に報告されているような成人の関節運動パターンとも類似している.一方, 足関節運動においては,3-4歳群では多くが背屈位で踵接地し, 7-8歳群と有意差を認めた.関節運動の時系列データを見ると 9歳以降に成人のようなパターンとなることが明らかとなった.これはVictoria Lら (2006)の過去の報告と一致している.足関節運動は効率的かつ円滑な歩行に貢献する.踵接地時の衝撃吸収後,足関節が速やかに底屈運動を行うことで前方への推進力を生み出すロッカー機能は5-6歳頃から発達し,9歳以降に成 熟する可能性が示唆された.本報告は我が国の幼児期からの歩行中の関節運動パターンを明らかにした初めての報告であり,今後臨床や研究において活用されることを期待する. </p> <p>【結論】</p> <p> 股・膝関節は3-4歳から成人と同様のパターンを示し,足関節運動は9歳以降に成人同様のパターンとなる. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>対象者およびその保護者には事前に,口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えられる危険性を十分に説明し,署名にて同意を得た.なお,本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て,実施された (承認番号:28-2-52,F200016).</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 39-39, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770654080
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_39
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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