重症心身障害児・者に対する超音波画像評価による気管横径の特徴と影響する要因について

DOI
  • 渡會 雄基
    社会福祉法人 札幌緑花会 大倉山学院
  • 横井 裕一郎
    北海道文教大学 医療保健科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
  • 松岡 審爾
    北海道文教大学 医療保健科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 重症心身障害児・者 (以下,重症児・者)の呼吸障害は多岐にわたり,様々な要因が絡み合い複雑である.その中に,気管の病態や舌根沈下,下顎後退などの上気道狭窄・閉塞,さらには気管に問題があると考えられる.健常児・者においては,気管の大きさに影響する要因の検討はされているものの,重症児・者を対象とし,気管の大きさに影響する要因について検討している報告はない.そこで本研究の目的は,重症児・者の気管横径の特徴を明らかとし,健常者との違いについて検討することとした. </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は,当施設を利用する大島分類1~4に該当する重症児・者とし,除外基準は気管切開,24時間人工呼吸器を使用,超音波測定部位に皮膚トラブルがある,不随意運動等により測定が困難とした.健常者の除外基準は,損傷を伴う呼吸器疾患や気管病変の既往があるとした.気管横径の測定肢位は背臥位,頸部中間位に保持した.測定方法は,触診にて甲状軟骨,輪状軟骨を識別し,輪状軟骨の下端にプローブを短軸方向に当て,超音波画像を2回取得し気管横径を測定した.超音波画像から気管横径を測定する際は,乱数表を作成しランダムに測定した.統計解析には,2回測定した平均値を使用した.統計解析は,目的変 数を気管横径,説明変数を年齢,性別,身長,頸部周径として,ステップワイズ法による重回帰分析を実施し,各対象群で比較,検討した.有意水準は危険率5%とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 本研究には,重症児・者21名 (平均年齢32.9±16.1歳,男性11名,女性10名),健常者は,33名が参加し,その中の1名が除外基準に該当したため,健常者32名 (平均年齢32.2±16.6歳,男性22名,女性10名)の計53名が対象となった.重症児・者の障害属性は,CP 16名,脳炎後遺症3名,脳外傷後遺症1名,染色体異常1名であった.気管横径の平均値は,重症児・者13.3 ±1.4mm,健常者15.1±2.1mmであった.ステップワイズ法 による重回帰分析の結果,重症児・者では身長 (P<0.001,標準偏回帰係数:β=0.64)と頸部周径 (P=0.001,β=0.46)が説明変数として残り,気管横径に対して有意に影響があることが示唆された.健常者では性別 (P<0.001,β=0.63)と年齢 (P=0.004,β=0.30)が説明変数として残り,気管横径に対して有意に影響があることが示唆された. </p> <p>【考察】</p> <p> 気管横径に対して影響する要因は,重症児・者では身長と頸部 周径,健常者では性別と年齢となり,異なっていることが明らかとなった.重症児・者の障がい特性を考慮すると,身長・頸部周径への影響因子として栄養摂取状態が考えられる.加えて,頭部保持能力などの運動機能の影響が考えられる.発達過程においては,感染症や消化器症状,誤嚥が気管の炎症・ダメージを招くことで気管横径に影響を与えている可能性が考えられる.このように,障がいが重度であるほど,気管横径が狭小化する可能性が考えられる.そのため,栄養摂取状態,生活場面に応じた姿勢・呼 吸管理,運動機能向上を目指した介入が重要であると考えられる.今後は,重症児・者の重症度による要因や発達過程において縦断 的に捉える必要がある. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は,北海道文教大学研究倫理審査委員会ならびに社会福祉法人札幌緑花会大倉山学院倫理委員会による審査,承認を得て実施した (北海道文教大学承認番号:第 03009号).対象者が健常者の場合は,本人に書面および口頭で説明し,対象者が重症児・者の場合は,ご家族または後見人に書面および口頭で説明し,書面にて同意を得て実施した.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 49-49, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770660352
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_49
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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