当院外来リハビリにおける神経発達症児に対する足底装具療法の現状

DOI
  • 戸村 菜々美
    第2北総病院 リハビリテーションセンター
  • 石田 悠
    第2北総病院 リハビリテーションセンター
  • 藤本 潤
    第2北総病院 リハビリテーションセンター
  • 星山 伸夫
    第2北総病院附属小児リハビリテーション事業所 かざぐるま
  • 鈴木 文晴
    第2北総病院 リハビリテーションセンター 第2北総病院 小児科

抄録

<p>【目的】</p> <p> 当院リハセンター小児理学療法外来における足底装具療法は,以前はダウン症児が多くを占めていたが,近年はDSM-5の大カテゴリー「神経発達症群」に該当する児の作製例が増加してきている.現在,常勤の小児神経専門医は1名でリハ処方や薬物療法,装具診察を実施しており,診察予約をとるのが非常に困難な状況である.そのため,足底装具療法の相談や適応判断に関しては,担当の理学療法士 (以下,PT)が窓口になって行 われている.必要性に応じて装具診察に繋げているが,PT間でばらつきがあることや判断に迷うことも多いのが現状である.自閉スペクトラム症 (以下,ASD)や注意欠如・多動症 (以下, ADHD),発達性協調運動症 (以下,DCD)などの神経発達症児の足底装具療法の報告は少なく,その実態は明らかになっていない.そこで今回の研究では,当院PT部門の神経発達症児に対する足底装具作製の目的や時期を後方視調査し,足底装具療法の現状を明らかにすることを目的とした. </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は,2023年4月時点に当院でPTを実施している「神経発達症群」の下位診断に該当する小児195例のうち足底装具を作製した32例 (CA範囲:2-14歳)とした.方法は,対象児を知的能力障害 (以下,ID)併存の有無でID (+)群とID (-)群の2群 に分類し,診療録から後方視的に性別,診断名,歩行獲得月齢,足底装具作製目的,装具作製月齢を調査した.分析は2群間で 診断名,足底装具作製目的の比率をFisher’s exact test で比 較した.さらに,歩行獲得月齢,装具作製月齢について Mann-Whitney’s U testにより2群間で比較し,有意水準は全て5%とした. </p> <p>【結果】</p> <p> ID (+)群は12例 (男児8例,女児4例),ID (-)群は20例 (男児 17例,女児3例)であった.診断別では,ID (+)群は12例全例 ASDであった (100%).ID (-)群はASD14例 (70%),DCD6例 (30%)であった.足底装具作製目的は,ID (+)群で扁平足の改善が9例 (75%),歩行時のバランス改善が3例 (25%),痛みの改善1例 (8%),ID (-)群は扁平足の改善が13例 (65%),歩行時のバランス改善が9例 (45%),痛みの改善が5例 (25%)で,両群の比率に有意差は認めなかった (p=.46).歩行獲得月齢の中央値 (四分位範囲)は,ID (+)群が23.5 (21.3‐24.5)ヶ月,ID (-)群は15 (13.8‐18.5)ヶ月で,ID (+)群は有意に歩行獲得月 齢が遅かった (p<.05).装具作製月齢の中央値 (四分位範囲)は, ID (+)群は64.5 (57‐97.8)ヶ月,ID (-)群が75 (54.8‐111.3) ヶ月で,2群間に有意差は認めなかった (p=.47). </p> <p>【考察】</p> <p> 当院で足底装具療法を実施した「神経発達症群」の下位診断は ID併存に関わらずASDが最も多く,次いでDCDで,ADHDはいなかった.ASDやADHDにDCDが合併することが多いが,5歳児健診で指摘されているように,ASDはADHDに比べて閉眼立位・片脚立位など下肢の協調運動やバランス能力に問題があることが報告されている.歩行獲得月齢はIDを併存すると有意に遅かったが,ID (-)群でも足底装具作製に至った症例は多く,下肢の協調運動やバランス能力の評価が足底装具適応を判断する指標になる可能性が示唆された. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会の承認を得て,倫理的配慮として個人を特定できないよう個人情報の扱いに配慮し実施した.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 55-55, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770663552
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_55
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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