我が国における理学療法士と特別支援教育に携わる教員との連携・情報共有に関するスコーピングレビュー

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 特別支援教育に携わる理学療法士 (PT)の役割は,障害を持つ児童生徒を対象に健康の質を向上させ,自立や社会参加に向けて学校生活や学習の支援を行うことである。PTは教員との連携が求められるが,PTと教員の連携に関する報告は少ない。そこで本研究ではPTと教員との連携・情報共有について,特に手段と内容に焦点を当て,既存の知見を網羅的に収集し,必要とされる研究を特定することを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 本研究はスコーピングレビューのための報告ガイドライン (PRISMA-ScR)に準じて実施した。検索データベースは医中誌, CiNii,PubMed,The Cochrane Library,PEDro,Google scholar,国立教育政策研究所教育研究情報データベースを使 用し,gray literatureも検索対象とした。論文は“理学療法 士 ”,“特別支援教育”,“連携”で検索し,2007年4月から 2023年4月の期間に「PTと教員における連携・情報共有」 に関する記載があるものを取得した。除外基準は,対象地域が日本国外,2007年4月以前の実践内容に関する記載のみ,PTのみが行った連携が特定できない,具体的なもしくは実践された連携や情報共有に関する記載がない,抄録のみで本文がないものとした。論文選択は,2名の担当者がそれぞれ独立して行い,意見が異なった場合は第3の担当者を交えた合議にて決定した。情報共有の手段は,類似する内容で分類した。情報共有の内容は,国際生活機能分類 (ICF)を参考に分類した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 2088編の論文が抽出され,111編の重複論文を削除した。タ イトルと抄録から1次スクリーニングを行い,76編の論文が残 り,それらを全文レビューした結果,26編の論文を対象とした。研究デザインは観察研究が7編,質的研究が3編,総説が16編 であった。情報共有の手段については92件の記述があり,学校訪問や会議などの「対面でのやりとり」が64.1%と最も多く, 「文書」が21.7%,「電話・メール」が6.5%であった。情報共有の内容については447件の記述があり,「活動・参加」が 49.4%と最も多く,「心身機能・身体構造」が23.3%,「環境 」が15.0%,「実態把握・支援の方針」が9.4%,「介助方法」が2.9%であった。また,情報共有に学校独自のツールや客観的評価を用いた論文は11編であり,内訳はICFを基にした「学校独自のツール」が3編,「Pediatric Evaluation of Disability Inventory (PEDI)」が3編,新体力テストを基にした「運動テスト」が3編,その他が2編であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> PTと教員の連携においては,ICFの「活動・参加」の情報を中心に,学校独自のツールだけでなく,客観的評価 (PEDI,新体力テスト)が用いられていることが明らかとなった。しかし,特定された客観的評価の種類は少なく,情報共有する手段が 「対面でのやりとり」であるため,主観的な情報による連携が多いと予想された。また,研究デザインでは対照群を設けた研究や,連携が児童生徒の学校生活に寄与したかなどの効果を検証した研究が少なく,連携の質の検討が必要であると考えた。そのため,今後は連携の効果検証や,特別支援教育の現場で用いやすい客観的評価を検討する必要があると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はスコーピングレビューであり,倫理的配慮,説明と同意を必要としないことを確認の上,実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 62-62, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623770666880
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_62
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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