前立腺術後の尿失禁予防に向けた理学療法士による包括的な関わりの効果

DOI
  • 小野 功介
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 久喜 啓誉
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 山本 美咲
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 徳山 美奈子
    埼玉医科大学総合医療センター WOC管理室
  • 竹下 英毅
    埼玉医科大学総合医療センター 泌尿器科
  • 川上 理
    埼玉医科大学総合医療センター 泌尿器科
  • 大林 茂
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部 埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> ロボット支援根治的前立腺全摘除術後(RARP)の尿失禁は骨盤底筋トレーニング(PFMT)での改善が報告されている。しかし、 尿失禁の予防において、術後早期の理学療法(PT)が術後1ヶ月後に与える予防的効果が明らかとなっていない。本研究の目的は、術後早期のPTが尿失禁予防に与える効果を明らかにすることである。 </p><p>【方法】</p><p> 本研究は前向き観察研究とし、対象は2022年8月から2023年3月までにRARPを行い、本研究への同意を得られた患者とした。対象は、理学療法士の指導の群(PT群)、パンフレットのみの配布(control群)の2群に分類して解析した。PT群は、術後早期から退院日までバイオフィードバック療法を用いたPFMT指導、退院後の尿失禁への対処法の説明やKnackの指導を行った。 Control群は尿失禁の予防に関するパンフレットを配布した。 調査項目は、術後1ヶ月の1日のパッド枚数、24時間パッドテスト、キング健康調査票(KHQ)とした。統計解析は2群の各調査項目に対して正規性の検定後、対応のないt検定と Mann-WhitneyのU検定を用いて比較し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 対象は、PT群18名(年齢71.5±1.2歳)、control群6名(年齢71.3 ±3.8歳)であり、全対象は術後1ヶ月において尿禁制以外のBIが全て自立していた。各群 (PT群/Control群)のKHQの下位項目は、生活への影響が54.8±8.3/75.0±16.0、家事・仕事の制限が34.5±7.9/62.5±8.0、社会的活動の制限が24.6±6.3/55.6 ±13.6、心の問題が30.0±6.7/52.8±7.0で有意差を認めた (p<0.05)。その他の項目は有意差がなかった。 </p><p>【考察】</p><p> 本研究では、PT群はControl群に比べKHQの日常生活や社会復 帰の制限に関連する項目のQOLが高かった。PT群は、PFMTに加えて、患者個々の生活スタイルや身体機能に合わせた指導を行っており、この指導が尿失禁予防に対する術後早期のPTの効果であったと考える。しかし、尿失禁予防に対するPTは、術後 1ヶ月の失禁量に影響を与えない結果であった。先行研究では、周術期のPFMTのアドヒアランスはP Tの介入頻度に関連することを報告しており、今後、PFMTの練習方法やアドヒアランスと合わせて術後早期の尿失禁量の予防について検討する必要がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は埼玉医科大学総合医療センター倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2021-126)。また、当院ホームページにて研究内容の公開を行い、オプトアウトの機会を設けている。</p>

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