運動器疼痛とプレゼンティーズムの実態および現在の取り組み

DOI

抄録

<p>経済産業省の「企業の健康経営ガイドブック」において、 プレゼンティーズムは生産性損失の指標として扱われている。就労者の健康に関わるコストのうち、医療・薬剤費や病休によるものよりもプレゼンティーズムの占める割合が大きいとされている。2019年秋に我々が実施した全国1万人の就労者を対象とした調査によると、プレゼンティーズムをきたす主な健康上の不調は、頚部痛・肩こり、腰痛、精神に関する不調であった。 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、企業は働き方の変革を余儀なくされたが、3年が経過した現在においてもテレワークを中心とした柔軟な働き方を継続的に取り入れている企業が一定数存在する。テレワーカーの健康面に目を向けると、座位時間が長くなったり、作業環境が整っていないことなどもあり、頚部痛や腰痛の訴えが増えていると企業の健康管理担当者から聞くことが増えた。実際に、コロナ禍のいわゆる第二波にあたる2020年夏に実施した調査においても、コロナ禍になってテレワークを開始した、または頻度が増加した群は、身体の痛みが悪化している者の割合が高いことが示された。つまり、運動器疼痛への対策は,個人の健康問題の改善だけでなく,生産性の向上といった企業へのポジティブな効果も期待されている。 各企業で独自に行われている腰痛対策の効果を高めるためには、最新の知見を反映した合理的かつ体系的な対策マニュアルが必要である。令和元~3年度に行われた厚生労働省の慢性の痛み政策研究事業 (慢性の痛み患者への就労支援/仕事と治療の両立支援および労働生産性の向上に寄与するマニュアルの開発と普及・啓発、研究代表者:松平浩)において、グローバルな知見を集約し、腰痛に対する考え方や具体的な対策をまとめた「産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル」が作成された。当マニュアルは、産業保健領域に関わるスタッフの腰痛リテラシーの向上に加え、就労者の労働生産性の向上にも寄与するものと考える。 本シンポジウムでは、運動器疼痛とプレゼンティーズムに関する我々の知見および取り組みを中心に話題提供をしたい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ