地域在住高齢者の身体活動と口腔機能の関係

DOI
  • 森下 元賀
    令和健康科学大学 リハビリテーション学部理学療法学科
  • 三好 早苗
    竹原・豊田地区地域歯科衛生士会 歯科衛生士
  • 國枝 洋太
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 全身のサルコペニアと口腔機能は相互に関連していることが多くの報告で示されており、理学療法士は口腔機能低下を全身に影響を及ぼすリスクととらえる必要がある。また、栄養状態に配慮して身体活動、社会参加を促すことによる全身機能の向上は口腔機能にも良い影響を与える可能性がある。我々は全身の活動と口腔機能の関連について調査した。 </p><p>【方法】</p><p> 研究1では地域の介護予防事業に参加する高齢者113名(平均年 齢: 75.7±7.3歳)を対象とした。ここでは日常の活動範囲のアンケート調査であるThe Life-Space Assessment(LSA)と口腔機能の関連を調査した。口腔機能は随意的最大舌圧、オーラルディアドコキネシス、反復唾液嚥下テスト、口唇閉鎖圧を測定した。身体的フレイルの指標は握力、基本チェックリストの点数とした。LSA、身体的フレイルが口腔機能に関連しているかどうかを重回帰分析で検討した。研究2では別の地域の介護予防事業に参加する高齢者57名(平均年齢: 75.8±5.1歳)を対象とした。ここでは日常の活動量のアンケート調査であるPhysical Activity Scale for the Elderly(PASE)と口腔機能のアンケート調査であるOral Frailty Index-8(OFI-8)の関連を調査した。PASE、 OFI-8、年齢のそれぞれの関連をPearsonの積率相関係数で調べ、 OFI-8でのオーラルフレイルのカットオフ値(4点)以上と未満を分けたPASEの数値をt検定で比較した。 </p><p>【結果】</p><p> 研究1では、随意的最大舌圧はLSA (B=0.222, p<0.01)、握力 (B=0.266, p<0.01)と関連していたが、その他の口腔機能とLSAとの関連はなかった。研究2では、OFI-8とPASEは弱い負の相関(r=-0.29, p<0.05)を示したが、年齢とOFI-8、PASEの相関はなかった。OFI-8においてオーラルフレイルの可能性が高い群のPASEの数値(103.6±46.2)はそうでない群(154.0±56.6)と比較して有意に低かった(p<0.01)。年齢とOFI-8、PASEとの相関はなかった。 </p><p>【考察】</p><p> 身体機能と口腔機能は関連するという先行研究があるので、活動量が多く、活動範囲が広い高齢者は全身のサルコペニアに随伴する口腔機能低下を予防できている可能性がある。また、口腔機能が良い高齢者は栄養状態が良くて全身のサルコペニアの進行を抑制できていて、活動的である可能性がある。 </p><p>【結論】</p><p> 口腔機能と全身の活動量、日常生活の活動範囲は相互に関連しているので、口腔と全身に対して複合的な予防介入が必要である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>それぞれの研究は研究実施時に所属していた吉 備国際大学倫理審査委員会(承認番号: 15-02、22-45)の承認を 得て行い、対象者には研究の趣旨を説明して書面で同意を得た。</p>

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