地域在住高齢難聴者における補聴器使用は要介護発生予防に有効か
抄録
<p>【はじめに、目的】</p><p> 加齢に伴う難聴は、他者とのコミュニケーションを制限し、活動的なライフスタイルの促進を妨げ、要介護発生の危険因子となることが報告されている。現在、加齢性難聴に対する治療法は確立されておらず、現時点での有効な対策として補聴器使用が推奨されている。しかし、本邦では欧米諸国と比較して補聴器保有率が低く、難聴が重症化してから補聴器導入が検討されるケースが多い可能性があるが、適切なタイミングで補聴器が導入され、要介護発生予防に補聴器使用が寄与しているのかは十分に検討されていない。そのため本研究の目的は、本邦における高齢難聴者の補聴器使用の実態を調査し、補聴器使用と要介護発生との関連を検討することとした。 </p><p>【方法】</p><p> 2017年9月~2018年6月に実施した高齢者機能検診に参加した 5,563名のうち、参加基準を満たし、2年後の新規要介護発生 の追跡調査が可能であった高齢難聴者848名(女性: 48.7%、平均年齢: 75.9 ± 5.9歳)を分析対象者とした。高齢難聴者は、補聴器使用者および、自己申告による難聴の評価(Hearing Handicap Inventory for the Elderly-Screening)で9点以上のものと定義した。解析は補聴器使用の有無で2群に分類し、対応のあるt検定またはカイ二乗検定を用いて、年齢・性別・難聴の重症度・心疾患リスクスコア・歩行速度などを比較した。また、補聴器使用と要介護発生の関連は生存時間分析を行なった。 </p><p>【結果】</p><p> 高齢難聴者848名の2年後の要介護発生率は、補聴器使用者 (9.8%)と補聴器未使用者 (6.0%)の2群に有意差は認められなか った (p>0.05)。しかし、補聴器使用者は補聴器未使用者と比べ、有意に年齢、難聴の重症度、心疾患リスクが高く、歩行速度低下が認められた (p<0.05)。また、補聴器使用の有無と要介護発生との関連について、Kaplan-Meier法を用いて検討した結果、 log-rank testで2群間に有意差は認められなかった (p>0.05)。 </p><p>【考察】</p><p> 高齢難聴者の補聴器保有率は21.1%であった。また、補聴器使用者は補聴器未使用者よりも年齢・難聴の重症度・心疾患リスクスコアが有意に高値を示し、歩行速度低下が認められた。補聴器使用は、生活の質向上や認知機能維持などに寄与することが示唆されており、高齢期の耳の不調に対しては、適切なタイミングで専門医の診断をうけ、早期補聴器導入の検討が重要であると考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 2.Suppl.No.1 (0), 151-151, 2024-03-31
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390862623770860800
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可